黒炎の絆
そうして。腕を押し除けたユウが浮遊しながらゆっくりとルーティ達の元へ降下していくのを見てネロはレッドを振り返った。目と目が合うなり反射的に目を伏せる彼に隠し事が下手だなと息を吐きそうになりながら翼を羽ばたかせて接近する。
「合流すっぞ」
「……うん」
地上では暴走メガシンカしたポケモンを相手に特殊防衛部隊のメンバーの一人がメガシンカを使って対処していたということで想像していた以上の騒動となっていた。騒ぎの様子に携帯端末のカメラを向ける人の姿も見受けられ、何かあればすぐにネットを伝って拡散される今の時代ではちょっとやそっとのことでは収拾がつきそうもないことが予想される。
「こらそこ撮るなぁ!」
「やべーことになってんな」
ネロは地上に降り立つと抱きかかえていたレッドを下ろしながら現状に顔を顰めた。
「まさかこんなに騒ぎになるなんて」
「拡散している側の誇張表現もあるでしょうね」
眉尻を下げるルーティの横でシフォンは溜め息。
「ゆ、ユウ!」
ネスは同じく地上に足を付いたが直後体をよろめかせるユウに駆け寄って支えようとする。
「……いい」
「でも!」
「構うな。お前たちもじっとしていろ」
その発言に各々が疑問符を浮かべていると。
「はいちょっと退いてー!」
人混みの奥から。
「通行の邪魔になるから道を開けて」
「カメラで撮らないでくださーい!」
……これは。
「遅れてしまって申し訳ない」
この場で最も求められていた交通整備が始まったのだろう解れを見せた人集りを抜けてようやく現れたその人にルーティは周囲に釣られて驚き目を見開きながらも酷い安心感からその名前を口にする。
「ロックマン……!」
フォーエス部隊が来てくれたんだ──!
「遅い」
「弁解の余地もありません」
冷たく吐き捨てるユウにロックマンは頭を下げる。
「ユウっ」
「我々が緊急を要するこの事態に参じるのが遅れたのは紛れもない事実だ。ありがとうルーティ」
嗜めようと名前を呼ぶルーティにロックマンは軽く片手を挙げながら断りを入れて。
「うちの隊員がとんでもない迷惑をかけたな」
ぐるりと見回してから。
「……この場の始末は他の隊員が請け負う」
遠く。
サイレンの音が聞こえる。
「俺たちは移動しよう」
日常が非日常に染まっていく感覚に。
「暴走メガシンカについて」
僕たちは。
「詳しい話をさせてくれ。……」