黒炎の絆
──次の瞬間。
「!」
ミカゲの体の表面に青白い光が薄ぼんやりと。何らかの技を使ったのだろうが残念ながらその意図は掴めない。状況の収拾をつけるのだとしても大怪我を負わせるつもりは。レッドは焦りを滲ませながら、
「ユウ!」
青白い光が標的の男を中心に著しく膨張する。
「っ……!」
膨れ上がった光は破裂するものかと思われたが予想とは真逆の末路を辿った。正確には半径四メートル程の大きさにまで膨れ上がっていた光は何の前触れもなく一気に握り拳程度の大きさにまで収縮して。
最後に一閃を残して光は消え失せる。静寂を揶揄うかのように風が吹き抜けて。
誰もが確信する。
確かに。蒼の脅威は去ったのだと。……
「……おいっ!」
逸早く硬直の解けたネロがユウの元へ接近した。
「お前アイツに何したんだよ!」
「皆まで聞かず疑ってかかるとはいいご身分だな」
眉を顰めるネロを横目にした後。
「……最悪の相性だったからな」
溜め息を吐き出して。
「このまま戦ったところで決着はつかないどころか余計な騒ぎが広がるだけ。だから移動させた」
「……移動させたって」
「メヌエルだ」
ユウは眉間に手を当てながら。
「知っているだろう……暴走メガシンカをしたポケモンはここでは容赦なく殺処分される。ショックを与えてやれば我に返るものかとも思ったがどうやら違うらしい。だったら具体的な解決法を得るまでの時間稼ぎという名目で少しでも仕組みに理解のある土地に送ってやった方が」
僅かに感じ取った異変にネロが凝視していれば。
「ここに居るより……マシな、待遇を……」
揺らぐ。
「ユウ!」
まるで魔法が解けたかのように。光の波紋が頭の先から爪先まで走ったかと思うとユウの体はメガシンカ前の元の姿に戻っていた。それと同時にゆっくりと前方に倒れかかるユウにネロは大きく目を開いて驚愕しながらすかさず胴体に腕を回して支える。
「おい!」
「っ……騒ぐな……」
ユウは回された腕に手を置きながら重く頭を擡げたが先程までとは打って変わって顔は血の気が引いておりあからさまな体調不良が窺える。
「騒ぎもするだろ!」
「私のことは、いい」
顔を顰めて騒ぎの絶えない地上を睨んだ後で。
「……移動するぞ」