黒炎の絆



まただ。瞬きも許さない間に。


──目の前に!


「こいつッ」

ミカゲが狙いを定めたのはレッドだった。目にも留まらぬ速さで糸を縫うように立ち塞がるべく前に出た二人の間を抜けて標的の元へ。後ろ手に水を滾らせ苦無を生成したが刹那目と鼻の先にまで接近を許したレッド目掛けて腕を引いた後振り上げる。

「!」

間一髪──ユウの双眸が金色に瞬きテレポートを発動してミカゲの体を瞬間転移させ空に打ち上げた。レッドの危機に顔を顰めながら振り返ろうとしていたネロはそれより早く標的の位置が転じると遅れて振り仰ぎ飛び上がる。

「ありがとう!」
「そう何度も使えるものと思うな!」

ユウはそう返すと自身も瞬間転移で激しく行われる交戦の場に参じて加わった。

接近の最中、ネロは構えた一方の手指の骨を鳴らして爪を鋭利に伸ばし、目一杯に振り上げるも寸前で印を結び丸太を繰り出して身を引くミカゲに青筋を浮かべて舌打ち。その隙を埋めるように屋根の上に着地したミカゲ目掛けて紫色のエネルギー弾が連続して放たれるもその全てをバク転含むアクロバットな動きを駆使して回避した後攻撃を放った本体が目の前に瞬間転移したタイミングで回し蹴り。

「ユウ!」
「掠めただけだ!」

レッドは顔を顰める──どうにか敢闘かんとうしてくれてはいるけど力の差が歴然すぎる! 彼は確かに元々優秀な能力を持っていたのかもしれないけどそれがメガシンカにより威力も反射神経も何もかも手に負えない程に跳ね上がっているのだとしたら悪い意味で時間の問題だ。何の為に戦況が見えやすい位置まで移動してきたんだ戦術師だろ考えろ!


メガシンカには。

同じメガシンカで対抗するしかない?


「っ……」

レッドは左手首のメガバングルに視線を落とした。一度開きかけた口を結んで固く目を瞑りながらバングルに触れて。意を決したように瞼を開く。

「……メガシンカだ!」

キーストーンに虹色の輝きが灯る。

腕を振り上げて叫ぶ。

「ユウ!」
 
 
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