黒炎の絆
……ユウまで!?
「ネロ!」
ルーティが冷や汗を垂れて困惑する間に我に返ったレッドが指示を出すとネロはすかさずレッドを抱きかかえて背中の翼を羽ばたかせ飛び立った。咄嗟に追いかけようとするルーティだったがローナに腕を差し出す形で制止を促されて。
「現代社会はメンドーだね」
一部始終を捉える携帯端末のカメラの群れ。
「……まずいことになったかも」
両者睨み合いの対峙に徹するユウの近くの建物の屋根の上に着地したネロは同じくその視線の先を睨み付けながらレッドを下ろしつつ訊ねる。
「状況は?」
「貴様の目は節穴か?」
「わぁーったよ」
突っ撥ねる状況でもないだろうに。
「アイツか?」
「ゲッコウガのメガシンカだね。初めて見た」
レッドは眉を顰める。
「……ミカゲ」
背中半ばまで流れた藍色の髪は毛先にかけて水色に染まり特徴的な角は淡黄から空色に。
服装はもちろん体格まで引き締まった筋肉質に変化しており双眸の紅蓮に浮かぶ白の瞳孔からは感情は読み取れない。仕事モードである彼はオフモードの雰囲気とはガラリと変わるとよく聞くが今この状態はそれが理由とは到底思えない。
「……暴走メガシンカ」
レッドは小さく呟いた。
「ネスとの外出中に鉢合わせた」
ユウは短く息を吐いてようやく着地する。
「被害を抑えるべくテレポートを使いながら攻撃を流したが一向に収まる気配がない」
この状態は。
いつから続いている?
「あっちとは連絡付いてんのかよ」
「そんな暇があるように見えるか?」
ネロは心底面倒臭そうに頭の後ろを掻く。
「この騒ぎだ。どの道気付く」
話している間にミカゲの体が揺らいだのを見て。
「──ネロ、ユウ!」
逸早く察知したレッドは声を上げる。
「構えて!」