黒炎の絆
「、!」
その意図は直ぐに判明する──レッドの示した方角から幾つもの、例えるなら水の弾丸があからさまな攻撃性を持って飛んできたのだ。それら全ては炎の壁を前に成す術もなく蒸発して無効化、程なく渦が途絶えれば完全な戦闘体勢でローナが踏み出す。
「今の」
「カメックスか?」
「ううん。絶対に僕の進化系統じゃない」
ネロの問いに首を横に振って。
「あれは水手裏剣だったよ」
え?
「水手裏剣って」
その技を使えるポケモンは。
「来る──」
接近を予感した直後レッドは目を開く。
「ローナ!」
黒い影が予測の範囲外から瞬きすらしない内に。
紅の閃光を引き連れて。
「っ!」
口の中が乾く。相手が速すぎる。
指示が間に合わない──!
「!」
それは声にする間もなく織りなされる。
黒い影が攻撃を下すよりも早く両者の間に割り込む形で現れたのは赤帽の少年。彼自身は浮遊しながら影と向き合い、人差し指と中指を立てて一方は自身の
「テレポート!」
こんな所で。
立て続けに会うなんて思わなかった。
「上!」
突如として現れたのは子ども組と括られるその一員の少年、ネスだった。声を掛けるよりも早く誰かに対して声を上げる彼に釣られて見上げれば。
「……!」
ネスの繰り出したテレポートによって強制的に瞬間転移させられた黒い影は上空にその身を投げ出されたが自身を仕留めるべく打ち出された紫のエネルギー弾の全ては身を翻し水技を打ち出すことによって相殺、屋根の上に難なく着地。ネスの声に従って移動先に逸早く駆け付けた上でエネルギー弾を容赦なくお見舞いしたその主は浮遊しながら数メートルの距離をあけて対峙する。
「ちょこまかと」
ネスは不時着した後肩を上下させて酷く疲弊している様子。もう長いこと追っているのだろうその人も苛立ちに眉を寄せながら。
「聞き分けの悪い両生類だな」