地獄の参観日
はてさて。
授業参観はまだ始まったばかりである。
「次はこの英文の和訳を」
ファルコンは教科書を片手にチョークを使って黒板にアルファベットを連ねる。そうして出来上がった英文を示すように中指の第二関節で軽く叩きながら振り向いた後で違和感に気付いた。
「……クロム」
「ん?」
「何故そこにいるんだ?」
いつの間にか保護者の中に混ざっている。
「父親だからな」
そういえば。確かに彼はとある世界線ではルキナの父親なのだった──神妙な面持ちで腕を組みながら仁王立ちで返答するクロムと親子さながらの似た表情を浮かべて深く頷くルキナに思わず言葉が出なくなりそうだが突っ込みたい点はもうひとつある。
「クッパ」
「愚問だな!」
返答は質問を投げかけられるよりも早く。
「我が輩も父親だからだ!」
ややこしい!
「元気よく手を挙げるんだぞ、ジュニア!」
「任せてよ、お父さん!」
そりゃ確かに父親だけども!
「ん?」
かと思えば今度はロゼッタが当てられていないにも関わらず立ち上がった。
「どうしたんだ?」
訝し気に見つめるファルコンに。
「……私も」
ロゼッタは物憂げな表情を浮かべながら。
「チコ達の授業参観に赴かなければ……」
どいつもこいつも!
「ロックマン」
ファルコンは暫し頭を抱えた後、黒板の文字を黒板消しでさっと消すととある英文を書き上げた。直後指名されたロックマンは何を戸惑う素振りを見せることもなく起立した上でその英文を読み上げる。
「Please stay seated during class.」
授業中は座っていてください。
「ま、当たり前だな」
すぅっと息を吸い込んだ後でロックマンは溜め息。
「英語以前に空気を読むことだ」
「パックマン今更だけどこのクラス先生がどーこー言うよりお前が言った方がすぐに聞くよ」
それはそう。
「校内での勝手な行動は個人であれ連帯責任としてクラス全体の評価にも繋がる減点行為だということくらい自己認識してほしいものだが」
紛うことなき正論。
「それで結局、我が輩はどうすればいいのだ?」
「ゆっくり観ていってください」
「流石に他のクラスの責任までは取れないからって遠回しに放棄してて草」