地獄の参観日



いやいや。

いやいやいやいや……


「何で母さんが来てんだよ!?」


同時刻。ダー組の教室にて。


「駄目だった?」
「だっ」

喉に言葉を詰まらせそうになりながら。

「駄目に決まってるだろ!」

スピカのクラスといえば以下省略。信じられないといった様子で声を荒げる勢いのスピカに反して母親のメルティは呑気に片頬に手を当てる始末。

「でもお母さんスピカの頑張るところ見たいなー」

扱いを心得ていらっしゃる。

「お義母さま!」


わぁ。


「自分は次の時間で必ずや番長に相応しい男だとお義母さまの前で証明してみせます!」

胸に手を当てて身を乗り出す勢いで迫るダークウルフに顔を真っ赤に染め上げるスピカと変わらぬ姿勢と態度で「あらあら」と微笑むメルティ。

「それを言ったら俺だって!」
「今日は、頑張る」
「はいはーいゲムヲちゃんも誓いまーす!」
「ふふっ……腕が鳴るねぇ……」
「僕も頑張ります……」
「ちょ、」
「お前たち。席に着きなさい」

騒ぐ間に教室の戸を開いて入ってきたのは数学担当教師のシモン。ばたばたと忙しなく席に着く中で誰より遅れて自分の席に着いたスピカは未だ火照りが冷めないままダークウルフをちらりと見た。

「授業を始めるぞ」

……本気かよ。

「まず早速だがこの問題を──」

早々に教科書を片手に黒板にチョークで数式を書き始めるシモンに早速随所で手が伸びる。

「はい!」

空気が震える程によく響く声量に。

「……ダークウルフ」

シモンが指名すれば。

「2です!」


lim[x→0]{xsin2x/(1-cosx)}の答えは。


「4ですよ」
「えっ」
「ダークファルコ。正解だ」
「あらぁ」

メルティは変わらず笑顔のまま。

「……すみません」

恥ずかしいヤツ……!
 
 
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