地獄の参観日
チャイムの音が鳴り響く。
「母さんっ!」
授業が終わるなりルーティはルピリアの元へ駆け付けた。流石に今度は周囲の目を気にして飛び付くまでのことはしなかったが息子の考えていることなどお見通しなのだろうルピリアはそっと頭を撫でて。
「お疲れさま」
「えへへ」
「もう少し手を挙げなさい」
「はぁーい」
レイアーゼ学園にはこの世界の平和を守る戦士を目指して通う生徒が数多く居る。卒業という日の目を浴びた時きっと子どもではいられなくなる──それでも結局そんな風に思うのは子どもだけで親にとってはどんなに形が変わろうと月日を跨ごうと自分の子どもは子どもなのだ。
こうした光景こそ最たる例だろう。悪辣な校長が何を見越して今回の行事を仕向けたのか知らないが結果として親からの愛を再確認できる良い機会だったのかもしれない。そんな評価を知ったらあの双子は小さく舌を打つことだろうな。……
「おにぃ!」
ピチカが駆け寄る。
「今日って部活お休みなんでしょ?」
「? うん」
「皆で一緒にご飯食べにいこーよ!」
見れば教室を出てすぐの廊下でスピカとクレシスが話し込んでいる。入学当初、ちょっとした反抗期で家を飛び出して寮生活を選んだのが彼だ。お陰で両親と顔を合わせる機会も減っていた訳だがどうやら授業参観きっかけで放課後夕食を一緒にすることになったらしい。そんな家族水入らずといった中に、割り込むような真似をしていいんだろうか──
「本当にいいんですか? 自分まで……」
おっと。
「いいのよぉ」
メルティは片頬に手を当てながら。
「オオカミ君、スピカのこと大好きなんだもの!」
途端に顔を頭の天辺から湯気を噴き出して顔を真っ赤にしながら弾かれたように振り返るスピカと、太陽のように眩しい笑顔で「はいっ!」なんて返事をするダークウルフ。
「スピカったら全然連絡してくれないのよ?」
「それはッ」
「よかったらたくさんお話を聞かせてほしいわぁ」
「もちろんです! お義母さま!」
これはこれは。
たいへん賑やかな食事会になりそうで。
「べべべべっ別にまだそういう仲じゃないんだからなッ!」
「スピカそれじゃ認めてるようなものだよ」
「うるさいッ!」
ちなみに。
「どうしたの?」
ひと段落ついたところで教室の窓を開けてじぃっと空を見上げるカービィにルーティは疑問符。
「帰ったみたいだからさ」
「お父さん?」
「んー」
「……お母さん?」
「どうかな」
……本当に何が来てたんだろう。
end.
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