ハチャメチャ!辛口お見合い審査員!?
人は見た目によらないとはよく言ったものだが──少女に想いを馳せるその人(人ではないが)が地位や財産等に眩んで耳当たりのいい嘘を並べているようには到底思えない。藁にも縋る思いで頼った先に手を差し伸べたのが見目麗しい少女なら心奪われないはずもなく──情景を想像したリムは心を打たれた様子で他四人に耳打ちで提案する。
「お話するくらいならいいんじゃないかしら」
元よりお見合いとはそういうものなのだ。
婚姻を結ぶか否か最終的な判断を下すのは無論自分たちであるべきではない。たった一度会ったきりの少女をこんなにも純粋無垢に想うその相手を、たかだか見た目を理由に突き返すなんて──
「いや」
ところが。
「面談は終わりだ。帰れ」
え?
「……ゴロ!?」
ユウの判断にゴロン族の男も驚いた様子。
「二度も三度も言わせるな」
「オレだって簡単に引き下がれないゴロ!」
「その足で帰るのが面倒ならテレポートで飛ばしてやっても構わないが」
短く息を吐いて。
「ただし」
伏せた瞼を持ち上げれば。
「あの辺りの地形には詳しくないからな。勇者すら手を焼く至極凶悪で獰猛な魔物の群れの中心に落とされても文句を言ってくれるなよ」
冷たく凍るような金色の双眸。
「……最も」
睨みを利かせながら。
「腹を空かせた獣どもがみっともなく苦言を宣う口まで残してくれるものとも思えないがな」
ドスドスと荒々しく踏み出る音に。
勢いよく閉ざされる襖。……
「ちょっと!」
リムは沈黙を破るようにして堪らず声を上げた。
「何考えてるのよ!」
「貴様の目は節穴か?」
対するユウは一切視線を寄越さないまま。
「とぼけた判断で身内を奴のコレクションに収めてやるつもりは毛頭ない」
コレクション?
「宝石というのも比喩表現でしょう」
「不埒な心情が視て取れたな」
「なんで言わないのよ!」
口々に話すリンクとリオンにリムは打って変わって自身を抱き締めるようにしながら顔を青ざめて震え上がった。彼らの話から察するに、先程のゴロン族の男はシアに心惹かれたのは確かだが常人には到底理解できない歪んだ趣味があった様子。
「身の上話だけじゃ分からんもんやなぁ……」
どうやら、これは。
見た目やプロフィールだけに限らず会話の中でしっかりとその人の性質を見極める必要がありそうで。
「お願い致します」
襖を挟んで、女性の声。
「分からないなら口を出すな」
ユウはふんと鼻を鳴らして冷たく吐き捨てた後で襖を睨み付けながら。
「不躾な連中はこの私自ら突き返してやる──!」