ハチャメチャ!辛口お見合い審査員!?
名前を呼ばれた少女は──男に背負われていた。
身長二メートルはあろう長身に筋骨隆々とした立派な体躯。ツーブロックショートの髪は菖蒲色で口元を覆うようにして鉄素材の面頬を装着しているのがどういう意図であるのか気になるが、メヌエルに住んでいる人型のポケモンなんて本元の特徴を表したような装飾や衣装を身に纏っているものなのだから触れ出したら切りがない。
……そもそも。この男はポケモンなのか?
「!」
男が踏み出すと五人は反射的に揃って身構えたが心配には及ばなかった。突き刺すような視線を向けられても尚男は怯むことなく終始無言でユウの目の前にまでやって来るとそのまま背中を向けて背負っていたシアを受け取るようほんの少し身を屈めながら促すのだから従わざるを得ない。
それでもユウが目配せをして何かあった時の対処は任せるといった風に伝えると他四人は小さく頷くことで応えたがやはり杞憂だったようで。シアを横抱きにしながら受け取ったユウはすぐさま彼女が腕を回してしがみついてきたことにほんの少し驚く。
「起きていたのか」
「……はい」
声に覇気が見られないのは昔からの癖のようで反省している証拠でもある。
「貴様は何者だ」
ユウは短く息を吐いた後で改めて男を睨み付けたが答えない。いやに冷え切った鉄のような視線だけは返してくれるが横にいるパートナーすらその心情は読めないようで無言で見つめている。
「あの、おにいさま」
シアはぎゅぅとしがみつく腕に力を込めながら。
「いいんです。解決しましたから」
「素性の知れない輩をこのまま見逃せと?」
「おにいさまの性格は重々に理解しております」
そこでユウは初めて彼女の様子が普段と異なっていることに気付く。ユウは先程より深く長い息を吐き出すと改めて男を睨み付けて言い放った。
「行け」
……男は森の奥へ去っていった。それでも暫くは警戒を解けなかったが完全に気配の消失を見届けると糸が切れたように五人は同時に息を吐き出して。
「何やったんや……今の」
「さぁ……」
口々に言うドンキーとリンクに続けてリムは思い出したようにぱっと顔を上げて駆け付けると。
「シアちゃん! 怪我は!?」
「いいえ。お心遣い感謝いたします」
行方を晦ませた時は一体どうしたものかと焦燥を覚えたが終わりよければ全てよしといったところで。ほっと胸を撫で下ろすリムを余所にそれまでユウの胸に顔を埋めていたシアがそろそろと振り返った先で偶然か必然かリオンと目を合わせると。
「お喋りは許しません」
「、んん?」
「おにいさまの伴侶と言えど罰を下します」
ユウは小さく息を吐き出す。
「……お前は犬の扱いが下手だな」
「飼ったことがないので」
「奴に仕置きを引き合いに出すのは間違っている」
「……なんとかしてください」
「知らん」
「おにいさま、」
他四人はきょとんと顔を見合わせる。
「リオン。何か見ましたか?」
「いや……私は……」
「いけません」
「ちょう見てみ」
「だめっ、」
「シアちゃん……顔、真っ赤よ?」
「ち、ちがいます──!」