ハチャメチャ!辛口お見合い審査員!?



ぴくっ、と。

頭の上の犬耳が震えた後、傾いて。

「リオン!」

敷地内にある森の中──何がそうさせたか突如として行方をくらませた本日の主役たる少女シアを探していた五人だったが進行方向から何の申告もなく九十度直角に曲がって走り出すリオンに逸早く気付いたリンクは声を上げて振り返った。

「ちょっと!?」
「へっ──ふごぉっ!?」

リンクに続けて最も先を念力による浮遊の合わせ技で突き進んでいたユウはこの事態に気付くや否や瞬間転移を使い瞬時に進行方向を転じるとリンクより先にリオンの後ろに付いた。驚いたリムが進路を変えるべく速度を緩めながら声を上げれば、そこでようやく異変に気付いたドンキーが振り返るも此方は運が悪く足を止めなかった結果木の幹に衝突。

「んもぅ、何やってるのよ」
「そんなん見たら分かるやろ」
「分からないわよ」
「置いていきますよ」

……一方でユウは走るリオンの横に移動するとその先を見据えながら訊ねた。

「見つけたのか」
「いや」


この耳が拾ったのは不審な音だけ。

けれどこの音は"悪い意味で"聞き覚えがある──


「!」

皆まで答える間もなくリオンとユウはほぼ同時に足を止めた。木の影が落ちている影響ではっきりとは窺えないが何者かが此方に向かってきている。

「リオン」

青の波導がパートナーの体の表面を揺蕩う中でユウもまた制止を促しながら双眸は念力を発動するべく紫から金に転じようとしていた。鬼が出ようが蛇が出ようが関係ない。正しい道から来るならまだしも茂みを掻き分けて敷地内に足を踏み入れようなどとはまさしく嘗められたもの。そうまでしておいて人並みの情け容赦などかけてもらえると思うなよ──

「!」

その全貌が明らかとなる頃他三人も到着した。いくら戦士を理由に運動には自信があったとしてもああも振り回されるような動きをされては堪らない。

「見つかったんか?」

ドンキーが訊ねるも二人は答えない。

「走ったり止まったり黙ったり忙しいですね」
「何とか言いなさいよ──」

リムは二人の横から顔を出した後で。

「えっ」

視線の先を辿るように正面を向いて目を丸くする。

「シアちゃん……!?」
 
 
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