ねこねこパニック!?



レイアーゼ中央部司令塔内部、四階。

「……やけに静かだな」

敵地に足を踏み入れるのは慣れたもので。用事といったものも相手が相手なだけに特にあるはずもないので不意を取れたら万々歳といった軽いノリ。そう思って訪れてみたのに均等に並んだ扉の奥からは気配すら感じられず推測するにもぬけの殻のようで。政府ご自慢の正義部隊が挙って拠点を空けていいのかよと突っ込みたくなるがまさか心配する間柄でもないので割愛しつつ独り言。

「いませんね」
「こっちも駄目だ」

見計らったように両側の扉が開く。

「どうします? リーダー」


ダークフォックスが居るならその他三名も居ないはずがない──珍しいことにある種の歓迎もされないままフォーエス寮の中を散策していたのはスピカ、ダークウルフ、ダークファルコの三人だった。

「会議室にいらっしゃるのでは?」
「いや。あいつら会議をするなら午前中に済ませて昼間は手隙にしてるはずだ」

スピカは通路をゆっくりと歩きながら。

「だから今この時間帯、寮に誰も居ないのは……」


視線。


「な、何だよ」

むっとして振り返る。

「随分お詳しいなと感心しておりました」
「そっそんなの敵だからに決まってるだろ! 別に特別興味なんかないんだからな!」


いつもの。


「そうだぞ失礼なことを抜かすんじゃねェ!」

ダークウルフが声を荒げる。

「リーダーは奴等のいない間に寮を荒らして戦力に携わる武器や書物を隠滅しようとお考えだ!」
「いや別にそこまでは」
「えっ」

ダークファルコは終始貼り付けたような笑顔でやり取りを見届けた後で辺りを見回して。

「それにしても」

話を本題に引き戻す。

「これだけ騒いでも誰も出てこないようですが」

続けざま。

「何かあったのでしょうか?……」

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