ねこねこパニック!?
噴き出す者数名。明後日の方向を見る者数名。
「いやぁ……」
頭の後ろを掻きながら誤魔化すように苦笑いを浮かべたが直後ドクターのすぐ真横をエネルギー弾が過ぎて壁に亀裂を走らせたのを見て沈黙。ロックマンは右腕の装甲を即座に解除すると小さく溜め息。
「わ、悪気はなかったんだがにゃ?」
まさか絶対零度の視線を突き刺す一触即発の魔王を前にふざけているはずもなくドクターは人差し指で頬を掻きながら。
「まさか俺が秘密裏に開発していた"猫耳と尻尾が生えた上で言葉の節々が猫語になる薬"が寮全体に撒布されてしまうにゃんて……」
そう。
今現在のフォーエス部隊の様子はご覧の通り。ドクターの開発した薬がアクシデントによって撒布された結果ものの見事に全員が頭に猫耳、尾てい骨の延長で尻尾が生えた上で言葉の節々(特にな行)が正しく発音されない事態となってしまっていたのだ。
「俺は悪くにゃいぞ」
ブラピは尻尾を揺らしながら頬杖を付く。
「あれだけ派手に窓に突っ込んでおきながら……」
「ふざけすぎたみたいですね」
そう話すのはお馴染み飛翔の奇跡でブラピの飛行を遠隔で制御していた様子のパルテナ。
「ぼ、僕は……その……換気をしてもらいたくて」
シュルクは猫耳を垂れながら縮こまる。とまあどうやら彼に換気を促されたドクターが窓を開けに向かったところ飛翔の奇跡の制御を誤ったパルテナのお陰でブラピが窓から突っ込み、その結果薬品を落として撒布させてしまったという流れらしく。
「大体分かった」
各々の意見を聞いたロックマンは盛大な溜め息。
「ドクター。何故その薬を?」
「よくぞ聞いてくれた」
さながら水を得た魚かのように。
「マンネリ化したカップルに足りないのは刺激だ。猫耳に尻尾なんてただのコスプレなら在り来たりだがそれが神経も連動した本物ともなれば盛り上がること間違いにゃし!」
ドクターは立ち上がると興奮した様子で。
「言葉の節々が猫語になる点もさることながら極め付けは猫そのものの特性も反映されるという点!」
その勢いのまま隣で欠伸を漏らしながら座っていたリドリーの腕を引き立ち上がらせたかと思うと。
「ッ、テメェ、にゃにしやが──」
尻尾の上の付近を。
強くもなく弱くもない力加減で叩いて。
「にゃぎっ!?」
わぁ。
「ほら、どうだ!?」
「にゃひっ、ぎ、ッ」
繰り返し叩く都度怒りのボルテージが上がって。
「こンのド変態がッ!」
当然の制裁。
「……大体分かった」
頭から壁にめり込んだドクターを目にロックマンは同じ文言を繰り返しながらジト目。
「事態は思ったよりも深刻のようだにゃ」
どうしたものやら。彼が秘密裏に開発していたと話すからには結局はまだまだ試作品の域を出ない薬品で時間経過と共に自然と効果が薄れてやがて解けるものとまでは推測出来るが。
「この状態で仕事とか無理にゃんだけど」
「誰か一人に限らず全員が無理にゃわッ!」
それがいつになるかも分からない。
「これじゃまともに喋れないでごにゃる……」
「お前の語尾はどうにゃっとるんだ」
「拙者が聞きたいでごにゃる!」