父なれば、父なれど
他より低い位置に設置された買い物籠の中に次々と放り込まれていく野菜……一見すると野菜が独りでに浮遊してその身を投じているようだがよくよく目を凝らしてみると野菜を運び出しているのは赤紫色の個体の羽ピクミンである。そして先程から買い物籠を持ち上げているのは見た目の大きさ以上の力で幾度となく窮地を救ってくれた紫ピクミン。
「お前。タブーを見たことがないのか」
「ちゃんと目ぇ開けてる?」
両サイドからの苦情が痛い。
それはそれとして確かに彼の姿は見たのだが……
「ったく」
クレイジーは早足で歩み寄ると紫ピクミンから買い物籠を少しばかり手荒に奪い上げた。気付いた紫ピクミンは温厚な性格が幸いして気にも留めないままその場にぺたんと座り込んで休憩を始めたが羽ピクミンはそうもいかずクレイジーに攻撃を始める。
「痛っ、うざっ!」
「同じ野菜ばかりだな」
此方も此方で実の弟が攻撃されているのにも関わらずそこまで気に留めていない様子で呟くマスターに釣られてオリマーが買い物籠の中身を覗いてみると確かに何故か人参ばかり放り込まれている。
そういえば彼らの"ピクミン"という名前も実際には正式名称ではなく私自身が故郷で好んで食べていた好物のピクピクニンジンに似ていたからそう名付けたもので。そんな事情を彼らが知る由もないことだろうがここで人参ばかり買い物籠に放り込んでいるということは彼らも少なからずこの形に親近感を覚えていたと解釈して差し支えないのだろうか。
……気付けば他のピクミンもズボンの裾を引いてアピールしているようだし。探すついでとはいえいい加減買わされているような気がしないでも──いやまあ財布事情的に痛手にすらなっていないが……
「、マスターハンド?」
受けた視線を追えば目を逸らされる。
「どうかしたのか」
「……いや」
「いーからコイツ止めろって!」
まだ攻撃されていた。
「ああ、すまない」
とはいえここで破壊の力を使って消し飛ばさない辺り良心が働いているなと思う。オリマーは先程からクレイジーに対する攻撃をやめない羽ピクミンにやめるよう注意を促した。しかしその最中とんと足に何かがぶつかってオリマーは怪訝そうに振り返る。
「……!」
白ピクミン。
「あ、」
何故か逃げ出した。
「待てっ!」
当然攻撃は止んでいないわけで。
「ちょ、おいっ!」
クレイジーは声を上げる。
「人参はどーすんだよ!」
「そっちじゃないだろう」
マスターが呆れたように突っ込んだ。