父なれば、父なれど
いつもの白い衣装ではなくグレーのトップスにライトベージュのカーディガンを羽織り暗い藍色のボトムといったスタイル。これだけなら気付けるはずもなかったがプライベートの装いであるというだけでそれ以上隠すつもりもないのか帽子を被っていなかったお陰でその薄青のショートヘアにピンときた。それに加えて左目を隠すように眼帯を付けているともなれば間違えるはずもない──思わぬ緊急事態に周囲に目配せをした後で臨戦態勢に入るオリマーに反してマスターは流し目で視線を寄越す。
「……お前の差し金か」
ぎくりとした。殺気にまでは至らないが周囲の温度が下がったのを直に感じる。どの道自分だって一人では戦えないのだ慎重に言葉選びをする他ない。
「何故、ここに」
オリマーがゆっくりと口を開けばマスターは手元で暴れる赤ピクミンを一瞥して溜め息。
「何を言い出すかと思えば」
終始呆れたような酷く冷たい目の色で。
「プライベートでの外出すら許されないのか?」
装いから粗方想像は出来ている。
「まるで有名人だな」
いやいや。その台詞を神様が言うのか。
「ピクミンを離してくれ」
オリマーが静かに言うとマスターは未だ手元でじたばたと忙しない赤ピクミンを見た。彼に左手があればそのつんと尖った鼻先を中指で弾くなどして虐めそうなものだがそこは幸運なことに隻腕ときた──
「何してんだよ兄さん」
前言撤回したくはなかったのだが。
「見ての通りだ」
右手があれば左手もあるのは社会的常識。そんなことは赤ん坊にだって理解できる。それだってそうではないことを俄かに信じていたのだ。残酷にもそんな健気な願いは打ち砕かれたわけだが──まあその相手がこんな神様ともなれば端から願い下げか。
「えぇ?」
双子らしく双子コーデといったところか同じ装いであるクレイジーは顔を顰める。
「んな小さい生き物虐めて悦に浸ってんの?」
ええぇえ……?
「恥ずかしいからやめてよ」
「どの口が物を言うんだ」
普段であれば如何なる発言も同意し兼ねるが。
これはそう。……本当にそう。