父なれば、父なれど



人波に抗いながらオリマーが文房具コーナーに足を踏み入れると他のエリアより幾分か落ち着いているように見受けられて思わず息を吐き出した。先程ぶつけられた肩を手で軽く払ってから踏み出せばこの時期の助け舟たる冷房の風に髪がそよぐ。

申し遅れたが今回は戦士としての立場は一切関与しないプライベートな外出ということで今現在の服装も見慣れてくれているであろう宇宙服ではない。

そう。だからこそピクミン達を止めることが出来なかったのだ。彼らに命令する際はホイッスルを利用していたのだが今回はそれがなかった。常備しておけという話に言い訳のような格好とはなるがこれまでは特に問題がなかったのだ。彼らは地面から引き抜かれた時点で誰に付き従うべきか熟知していたしそういう意味ではホイッスルはお守りに過ぎない。

そうして気を抜いた結果がこれなのだから乾いた笑いも涙も出てこない。嘆いている暇があるなら、と止めていた足を踏み出したが直後自身が足を踏み入れたコーナーが旅行をテーマとした雑誌が並べられていることに気付いてしまい足が止まる。ただ何となくポップで着飾られ強くお勧めされていた雑誌を手に取れば地上界にある観光地を如何に安く素早く巡るかといった内容のもので。

簡単に目を通してみたが成る程思うより時間に追われることなく子連れにも安心のプランだった。これならピクミンを連れて行くことも──


いやいや。

何を考えているんだ。私は。


ほんの一瞬でも浮かれたことを思い浮かべてしまった自分に半ば呆れながらオリマーは雑誌を元の位置に戻すと以降は目移りしないように真っ直ぐ前だけを見つめて突き当たりを曲がった。今はとりあえず彼らを見つけなければと辺りを見回していれば。

「!」

ピクミン特有の鳴き声が聞こえてきて。

「なんだ。騒々しいな」

顔を向けた先。足下で騒ぐピクミンにそれまで立ち読みをしていた少年は痺れを切らしたように頭と葉の間の部分を掴んで持ち上げた。それでも尚短い手足をばたばたと動かして抵抗の意思を見せるのは間違いない赤ピクミンである。

そしてその様子を気怠そうに見つめていたのは。

「マスターハンド……!?」
 
 
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