父なれば、父なれど



自分の立場を守ろうとする側の話だけでは実際の背景は見えてこないもの。つまりこのデパートを訪れて開幕タブーが何かに興味を惹かれて走っていってしまったのをクレイジーが追いかけるも道半ばで菓子類を販売している店の冷蔵ショーケースの中身に気を取られてしまい、マスターはその様子を横目に視界の端に捉えた本屋に足を進めたが最後戻らず。最終的にタブーはその何かへの興味が薄れて元の場所に戻ったが今度はふたりの姿が見当たらずに仕方なくふらふら彷徨っていた、と。……

「何だよ。その目」

私のこの終始開かない糸目の違いが分かるのか。

「いや」

断ったが直後小さな手が足を叩いた。

「!」

そこに居たのは白ピクミン。

「あっ」

タブーが気付いたように声を上げる。

「うごくやさい」

……まさか。初手で興味を惹かれた何かって。

「ん?」

かと思えば自身の横に置いていた何かを持ち上げて差し出すように抱えた。どうやらそれは金メッキの笛のようで──オリマーは訝しげに受け取る。

「何処でこんなものを」
「……お前さぁ」
「鈍感に磨きが掛かっているな」

喧騒は終えたのやらマスターとクレイジーが口々に言うのをオリマーは慌てて振り返った。

「どういう、」
「それプレゼントじゃない?」

クレイジーは続ける。

「父の日の」


あっ。


「……ち……父、?……私が?」

馬鹿にしているわけでは決して無いが果たして彼らに諸々を理解できるような能力があっただろうか。しかしながら確かにもしそれが仮に万が一にでもそうだとして彼らを見つけた本屋や植物店では父の日の特集としてプレゼントにぴったりのアイテムがピックアップされていたし人参は私の好物でもあるしもしや本気で嘘偽りなく純粋に、

「うれしい?」

タブーが後ろ手を組みながら覗き込んだ。

「、ぅ……うぅむ」

体の其処彼処がこそばゆい。

「……ありがとう」


父なれば気付くこと。父なれど気付けないこと。

それは。最も身近で直向きな、……


「あ」

人前であることがすっかり抜けていたのだ。それにしたってこういう幸福を祝う拍手喝采というものはもっと若い男女に向けられるべきだとは思うが──

「はずかしい?」

追い討ちの一手にオリマーは頭を抱えながら。

「……勘弁、してくれ」

親の心子知らずとはよく言ったもので。

力が抜けたようにその場に屈み込んでしまったその理由を純粋無垢な我が子たちは知る由もなく。



end.
 
 
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