英雄のプレリュード



人という生き物は。

生まれた瞬間から全てが決まっていて。


地位も名誉も何もかも。生まれ持った才能や資質、容姿──果ては親の財産とか。どちらか一方だけなら未だしも持て余すくらい取り揃えているなら何を求めても願っても手に入らないものもなれないものもないって本気で思ってたんだ。


それが、案外上手くいかないものなんて。

想像もしなかったな。


「ラディス……っ」


泣かせるつもりはなかったんだよ。

皆にはもっとちゃんと笑っていてほしかった。


想像も付かないだろ?

そうやって泣きながら見送った男の過去がこんなにも無節操で無神経で無頓着で──自分の持ち得るカードより劣る相手を屈託のない笑顔で接しながら取り繕いながら心の奥底で見下してた。自分はきっとああはならないしこの先関わらないだろう、って。


そう思っていたのに。

俺。……良い意味で変われてたかな。


それだけの人生じゃないって。

こんな世界じゃないって。


何度も。声が枯れるくらい叫んで。

手を伸ばして。……掴んで。


俺。ちゃんと英雄ヒーローになれたかな──


どうか忘れないでほしい。

引き摺れって意味じゃないんだけどさ。


自分や家族だけじゃなくて一人でも多くもっと他の誰かの為に戦うことを望んだ、馬鹿な男を。


……これは。

後に英雄となる男の始まりの物語。……



end.
 
 
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