英雄のプレリュード
少し残念だったのはこの頃からトキは学校に登校しなくなっていて交流の機会がなかったということ。厳しい言い付けによる自宅謹慎とか思い悩んだ末の不登校とかではなくご両親の意向によるもので──そうは言っても彼自身は望んではいなかっただろうからああいう難しい家系に生まれると大変なんだなとぼんやり思った。その点に関してはうちの家系がそうではなくてよかったと本気で思う。……
「……戦士?」
茜色の空の下。人通りが少ないことをいいことに四人横並びになって歩きながら将来の夢に関する話の流れでそんなことを打ち明けた。
「医者にならないの?」
「人を助けるって意味では同じようなものだよ」
「違ェだろ」
「そりゃ根本的には違うと思うけど」
苦笑いを浮かべていると。
「ふぅん」
ルピリアは横からジロジロと覗き込んだ後で。
「似合わない」
「えっ」
「虫も殺せない顔してるもの」
「そりゃ一理ある」
「ええっ」
「ラディス君優しいもんねぇ」
「えええっ?」
三人に立て続けに言われたのでは何か。何か。
「ンなしょぼくれた顔すんなって」
クレシスが笑う。
「俺が見張っておいてやるよ」
「じゃあクレシス君も戦士になるの?」
「まァな。コイツ一人じゃべそかくだけだろ」
「む。俺だってそこそこ強いよ?」
「言うじゃねーか」
「言い出したのはそっちだからね」
一触即発の空気に見えて言ってみれば冗談である。
「け、喧嘩は駄目だってば!」
それを分かっている三人に反して本気に捉えたメルティが慌てて止めに入るのも定番の流れ。
「いいじゃない。この際だからどっちの実力が上か勝負してみたら?」
と思っていたのにまさか助長してくるものだとは。
「ルピリア!? 何言ってるの!?」
「いずれタッグを組んで戦うなら互いの実力くらい知っておいた方がいいと思うけどなー」
「そ、それは……そうかもしれないけどぉ……!」
クレシスの視線を感じた自分は暫し思考した後で。
「……じゃあ」
次の発言を待つべく足を止めた三人よりも一歩前に出た後で振り向きざまに提案する。
「俺が勝ったら……付き合ってくれる?」
なんて。
「えっ」
「あ、それなら……いいかも」
「ちょっと」
「じゃあ向こうの広場でやろうぜ」
「いいよ」
「なんでそんな話に」
ただ一人困惑する彼女を差し置いて目と鼻の先にある広場を目指し、クレシスと一緒に駆け出す。何となく気恥ずかしくも思ったが隣にいる彼はわざと勝ちを譲ってくれる性分でもない。かといって大きな怪我まではさせたくないしどうしたものかと考えていた矢先後ろからこんな声が聞こえてきたのだ。
「顔真っ赤よ。ルピリア」