英雄のプレリュード
本当に。生まれた瞬間から全てが決まっているものだと本気でそう思っていたんだ。
容姿や資質に恵まれた上振れの人生を台無しにするつもりもなかったし順当にただひたすらに真っ直ぐ整備された道を歩いていけば幸せになれるものだと信じて疑わなかった。実際その通りだったと思う。
……でも。仕方ないんだよ。
俺たちは出会ってしまったんだから。
道を外れたことを後悔なんてしていない。寧ろこれまで無味無色だった世界に鮮やかな色を落とされたかのようで子どもみたいに胸を躍らせていて。或いは拘束具を外されたかのような解放感に早くも浮き足立ってしまっている自分がいて。
戦士になったら。
俺はこの世界の広さを垣間見るのだろう。……
「あ」
数週間と経ったある日の朝教室の戸が勢いよく開くのに振り返ればそれまで話していたクラスメイトの誰一人引き出せなかった笑みが込み上げた。
「おはよう、クレシス!」
果たしてどちらに驚いたのか教室内が分かりやすくざわついたのをよく覚えている。
「退院おめでとう!」
「お前」
「思ったより早くてよかっ」
「そうじゃないだろ」
席に向かうなりそれまで居た席を離れて笑顔で駆け付けたのにばつが悪そうな顔をされたのでは頭上に疑問符が舞うのは当たり前じゃなかろうか。なんて矢先に騒々しく何かの落ちる音に振り返れば。
「あ……あ……」
ルピリアが口をはくはくとさせていて。
「ぁ、あな、あなたなんで、えっ」
「そういえばまだ話してなかったね。実は」
「話さなくていいだろ」
「いや話しなさいよ今すぐ!」
ノートだの筆記道具だのを落としたのは彼女の隣で一時限目の授業に使う物を取り出そうとしていた様子のメルティで。ルピリアが厳しく言い付けながら詰め寄るのに反して涙を溢れさせながら。
「く、っくれしすくぅん……! うわぁん……!」
騒がしくて仕方ない。
「ピーギャーうるせェ耳に響くんだよ!」
「説明が先でしょ!?」
「ンなモン後にしろ!」
「うえぇーん!」
「あ、あまり目立つことはしない方が」
「お前が言うな!」
「貴方が言わないで!」