英雄のプレリュード
その後は大変だったよ。
いくら子どもの喧嘩とはいえブランの子息に怪我を負わせたってことで両親を呼び付けられそうになったところをトキが必死になって庇ってくれたお陰で見逃してもらえて。それでもこのど田舎の情報網の下じゃ両親の耳に入らないはずもなく、帰って早々に天変地異でも起こったんじゃないかというレベルで怒鳴り付けられてしまって。その上隣に不良と名高いクレシスまでいるものだから飛び火しかけたんだけどそこは今度俺がムキになって火に油。
何というか。
俺ってここまで感情を剥き出しに出来たんだなって我ながら感心してしまったな。その時は。
先に熱の落ち着いた母親が父親との間に入って仲介人になろうとはしてくれたんだけどそこでまた俺が医者にはならないなんて話し出すものだから遂に手まであげられちゃってさ。勘当は免れないなとぼんやり考えながらそれでもどうにか一通り話し終えた後で口を噤んで一部始終を見守っていたクレシスも交えて世界一気まずい夕飯を終えて。
「どうするんだよ」
そんなことを聞かれた。
もちろん俺の部屋に戻った後で。
「これから? それとも俺の将来の話?」
「……どっちも」
その頃には俺の中で答えはハッキリとしていた。
「俺が親から紹介状をもぎ取るから君にはまず病院で治療を受けてもらう。君の両親の行方は知らないけど頼るつもりもないだろう? 俺が金を出すよ」
クレシスは黙って応急処置を受けていた。
いやに大人しくて笑いそうになったのを覚えてる。
「後、……俺、医者じゃなくてさ」
「おう」
「戦士になろうかなって」
「、……は?」
これは当たり前の反応。
「お前」
「自分が如何に無力か思い知ったよ」
瞼を伏せ気味に。
「助けることが出来たのは君だけだった」
「もう一人逃げたって話だろ」
「みたいだね。どうなったかな」
驚いたのはその後で。
「クレシスは高校卒業したらどうする?」
何気ない質問のつもりだった。
「……俺も」
クレシスは答える。
「なってやってもいいけど。……それ」
案外変わるもんだよ。
敷かれたレールの上を歩くだけの人生だったのに。
「ならなくてもいいんだけど」
「なる」
「無理をする必要は──」
「ヒトの人生に口出しすんな死ね」
「あだっ」