英雄のプレリュード
そう言うや否や即時踵を返すラディスに並走していたクレシスは反応が遅れた。「はあ!?」と声を上げながらも別々の道を進むなんて選択肢があるはずもなく来た道を引き返すラディスの隣に並ぶ。
「道間違えたのかよ!?」
「……罠だ」
クレシスは小さく目を開く。
「来た時とシャッターの位置が変わってる」
「誘導させられたってことか?」
「ここまでは想定の範囲内だと思う」
引き返したところでまた待ち構えているだろう。
「どうするんだよ……!」
顔を顰めるクレシスにひと呼吸置いて。
「考えがある」
幼い頃。
目で見て盗んだとっておきの技。
「まだ走れるかい?」
それは自分と同じ電気鼠の種族で且つ極々一部のみ使うことが出来るのだという。
「そりゃ走れるには走れるけど、っ!?」
「しっかり手を握って」
だがしかしその威力は膨大で相応に負荷が掛かる為悪条件が揃えば瀕死に陥るとも云われる禁忌の技。
「おい……!?」
ただの格好付けじゃない。
その先を考えるより駆け抜けるべきだと思った。
「ちょこまか逃げ回りやがって!」
「挟み討ちだ!」
読み通り突き当たりで待ち構える複数人の防護服の男らを見据えてラディスはその手を誤って手放してしまわないように握り締める。
「捕まえろ!」
体の中の電気回路を弾ける勢いでフル回転させて。
風よりも光よりも何よりも──速く。
「行くぞ!」
猛獣のように轟音を響かせて
その技の名前は。
「──
速さは流星の如く。輝きは光の如く。
「なっ!?」
何者にも捉えられない。
「うわあああっ!」
妨害を試みる防護服の男らを弾き飛ばし、果ては立ち塞がるシャッターは疎か壁さえも打ち破って突き抜ける。崩壊の音も阿鼻叫喚の声もその速さを前に全て遅れて聞こえてきた。
止められない。
止められるはずもない。
金色の流星はやがて辿り着く。到達する。
悠々と立ちはだかる最後の壁を容赦なく打ち破れば真の光が差し込んだ。……そして。