英雄のプレリュード
ぱっと視界が明るくなり、解放される。
半端な高さだったが難なく着地。片膝を付くような姿勢となっていたラディスはゆっくりと体を起こすと辺りを見回した。直後地響きすら伝う爆発音に振り返ればそこには白い壁があり近くにその場所へ通じる扉等も見当たらないことから彼自身も予測出来ない位置に自分が弾き出されたものと思い知る。
「!」
かと思えば警告音が鳴り響いた。区画毎に設けられているのであろうシャッターが下り始めたのを見てラディスは一先ず一つ目のそれを潜り抜ける。抜けた先も変わらず白い通路が続いていたが十字の分かれ道とその先にはT字、突き当たりに至るまで扉が点々と置かれており選択肢が広がった。どの道順基どの扉か等と立ち止まって考えている暇はない。
知らなかったんだ。
自分がこうもよく知らない人を相手に必死になれるということ。乾き切った無色の世界に色を落としてくれたのが何も知らない君だということ。
「こいつ!」
見計らったかのように扉を開けて飛び出してきた複数人の防護服の男を正面に床を蹴り出すと軽々と頭上飛び越えて背後に着地──振り向きざまに強烈な回し蹴りに加えて電気を流し込み、意識を奪う。
君は言ったね。
ヒーロー気取りの偽善者だって。
「ぐあっ!」
なら。撤回させてみせるよ。
「この餓鬼……!」
偽善でも何でもない本当の素直な気持ちで。
他の誰でもない君を。
本物の"正義のヒーロー"のように──
「捕まえろ!」
十字路を過ぎ去ろうとしたが直後待ち構えていた防護服の男に金棒を振り下ろされた。寸前で気配に気付き視線だけ向けられたところで回避には至らず後頭部を殴打──視界が歪んで床が近付く。霞みが掛かれば瞼を半分ほど下ろした後で力なく閉じた。遠く男たちの声が聞こえる。走馬灯なんて上等なものは齢十幾つの男相手には悔やまれたようで、瞼の裏には延々と黒闇が広がるばかり。
「電気鼠め」
声が遠ざかっていく。
「手間かけさせやがって」
俺は。……