英雄のプレリュード



愕然とした様子のルピリアに。

「記憶情報について此方は一切関与していない」

スピーカーの声は追い討ちのように。

「つまり。そういうことだ」


四人はそれぞれ別の意味で言葉を失う他なかった。

ただの単なるクラスメイトで顔見知り以下でしかないのに認識してもらえているはずもない──百歩譲ってそれは納得がいくものだとしても今の自身の状況を鑑みればどう見ても助ける為に飛び込んできたであろう少年少女に嘘でも縋りついた方が多少なりとも利点はあるだろうにそれすら選択肢にないかのような口振りで突き放すものだとは。

思考が読めない。そうも今の状況以上に彼の背景が痛く苦しいものだった? ラディスは表情一つ変えずただ此方をじっと見詰めるだけのクレシスの瞳を覗き込むように一心に見据えた。


暗示。洗脳。

そのどれも当てはまらないのだとすれば本当に彼は自分の意思で此処に留まる選択を──?


「さぁ始めよう」

スピーカーの声にラディスはハッと顔を上げた。

「、始める?」
「残念ながらこの後も立て込んでいるんだ」

心臓の音が加速する。

「0025号」
「待って、私たちっ」
「彼らを殺しなさい」
「戦うつもりは」

ルピリアの必死の訴えも虚しく。

「──!」


黒の雷が鳴き声を上げて。


「……るせェ」

ラディスのすぐ横を過ぎ去り壁に激突して粉砕。

「うるせェうるせェうるせェうるせェ!」

跳ねる黒の閃光にあからさまな殺意を感じ取ったラディスとトキは視線を交わし構えを取る。

「クレシス君!」
「黙れッ!」

ルピリアはたじろぐ。

「……何にも知らねェクセに」

叫ぶ。

「知ろうともしなかったヒーロー気取りの偽善者どもがあッ!」
 
 
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