英雄のプレリュード
足音が響く。……遠退く。
「行こう」
未来予知によって経路を視たトキの指示の元、四人は防護服の男らとの接触を回避しながら順調に目的とする場所を目指していた。それこそこれといったアクシデントもなくハプニングもなく──このまま上手く事が運べばこの研究施設の中で囚われているであろうクラスメイトを救出することが、……
「君は」
ラディスはふと疑問を口にする。
「どうして、彼に拘るんだい?」
そう訊ねた後で視線を感じた気がして慌てて、
「もちろん深い意味はないんだけど──」
「理由が必要?」
……きょとんとする。
「必要よね」
そりゃそうか、とルピリアは勝手に納得する。
「まず大前提として──捕まったのが例え貴方でも名前を知らない誰かでも間違いなくそうしたわ」
ルピリアは正面を見据えて歩きながら。
「何もしなかったことを後悔したくないの」
目を、開く。
「何も成し得なくたっていいのよ」
ルピリアは続ける。
「見返りが欲しいわけでもなければ正義のヒーローになりたいわけでもない──ただの自己満足に過ぎないけれど何もしないでいるのは嫌なの」
ラディスは呆気に取られていた。
「……それは……それは例えば自分がどんなに……恵まれた立場だったとしても?」
何を重ね合わせているのか。その意図を即座に汲み取れたがルピリアは迷わず言葉を続ける。
「もちろん」
靴音が鳴り響く。
「与えられた立場が全てだなんて──そんなはずはないじゃない?」
ルピリアは振り返る。
「お人形みたいに人生を淡々と過ごすよりそっちの方がずっとかっこいいわよ。……多分ね」