英雄のプレリュード
先を歩いていたトキが曲がり角に差し掛かったところで足を止めたかと思うと片手を軽く挙げて制しつつ壁側に身を寄せて通路を覗き込むので後から来た三人は同じように息を潜めながら様子を窺った。
「見つけたか?」
「いや」
白い防護服の男三人が何やら話している。
「まさか鼠に潜り込まれるとはな」
……!
「博士は?」
「アルファの研究にあたっている」
「それどころじゃないだろうに」
「見つけたらどうする?」
内一人が訊ねる。
「まずは生け捕りだ」
「その後は?」
「どうだろうな」
男は笑う。
「対応にあたった研究員次第だ」
まずいことになってきた。
「どどっ、どうすんのよぉぉぉ……!」
メルティが声を潜めてルピリアの袖を引く。
「馬鹿言わないで。今更どうしようもないわよ」
「と……トキ君、テレポートは」
「このタイミングで引き返すのは──」
「彼女だけ連れ帰るのも一つの選択肢だとは思う」
一切目的を違えるつもりのないルピリアに涙目になりながらトキに助けを乞うメルティだったがトキが苦言を呈するよりも早くラディスが提案した。その思わぬ提案に、ルピリアは目を丸くして振り返る。
「なっ……貴方はどうするのよ」
「もちろん付いていくさ」
ラディスは真剣な面持ちのまま、変わらず防護服の男たちの動向を窺いながら。
「何処までも」
──暫くして防護服の男たちはラディス達が今居る場所とは全く正反対の見当違いの方向に向かって話を交わしながら歩き出した。運が味方したか神様がこの現状を見兼ねたか……いずれにせよ、この場は何とか救われたというわけだ。
「……何よそれ」
ぽつりと零すルピリアにラディスは振り返る。
「変な人」
そうして浮かべた彼女の柔らかな笑みに。
目を奪われないはずもなく。
「……いや、……はは」
ラディスはしどろもどろしながら。
「……よく言われるよ」
「今のって……!」
「期待しない方がいい。あれは無意識だからな」
「え、……ええぇー……」