英雄のプレリュード
……研究所?
もう戻ってこれない……って。
「あ、あの」
そう考えていた時には飛び出していた。
「すみません」
唖然とする男女に。
「その、……クレシス君は……?」
その後の展開は分かりやすく。
突っ撥ねられた上で逃げるように荷物を持って立ち去られてしまったようで──当然それで納得がいくはずもなく一気に詰めて自分まで巻き込まれてしまわないように少しずつ情報を集めていった結果この場所に赴き、そして現在に至るのだと。
「君も人のことが言えないな」
ルピリアはむっと唇を尖らせる。
「友達まで巻き込むのは──」
「それはっ」
「わ、私が勝手についてきたの!」
「そういうことを言ってるんじゃない」
言葉を挟む余地も与えずぴしゃりと。
「もっと時間を掛けていれば最善はあったはずだ」
「……でも」
ラディスは首を横に振る。
「君の気持ちは分かるけど今の状況を招いたのは急いた結果でもある。彼女が親友ならどう跳ね除けたって付いてくることくらい分かっていたはず」
思えば、自分で自分のこの無鉄砲な性格に歯止めが利かないまま無茶な行動を起こした時も泣きべそをかきながら味方に付いてくれたのは彼女だけだった──ルピリアが顔を向けるとメルティは申し訳なさそうに眉を八の字に下げて視線を返す。
責める道理もない。
こればかりは彼の言う通りだ──
「いいかい?」
ラディスは諭すように。
「君は人のことを厳しく言うけど自分だって──」
「お父さんみたい」
へ?
「俺は今真面目な話を」
「というかジジくさい」
ずしりと。
岩よりも重い何かが伸し掛かる。
「あのなぁっ!」
声を上げるラディスに反してルピリアとメルティは堪えきれずに吹き出して。
「ほんっと変なひと」
「ねー」
ラディスは困ったように頭の後ろを掻きながら。
「トキからも何か言ってやってくれ──」