英雄のプレリュード
実験動物、って。
「ねずみポケモンだけに?」
しん、と静まり返る。
「ラディス」
「うん」
「貴方ひょっとして馬鹿でしょ」
言葉の棘が突き刺さる。
「表向き成績だけは優秀に見えて自分の頭で考えて結果が意味を成すように結び付けて行動しないから人と会話すると直ぐに裏目に出る」
それはそれは。
「自己意識が薄くて流されやすい。恵まれた家柄も相俟って親しみやすさはあるけど結論顔が良いってだけで他はまるで駄目ね」
容赦なく。
「と、トキぃ」
腕を組みながらうんうんと頷いてルピリアの意見に同意を示すトキにラディスは半ば裏切られたような気持ちになりながら情けない声で呼んだ。いやまさかこうして付けてきただけでここまで罵られるものだとは誰だって思わないだろうに。
「というか……呼び捨て……」
「敬称は敬う相手に付けるものよ」
ふんと鼻を鳴らすルピリアに。
「俺……嫌われるようなことしたかなぁ……」
「したんじゃないかなぁ……」
メルティは苦笑い。
「──!」
と。そんな空気も一瞬にして凍り付く。
「しっ」
ラディスが人差し指を立てた。
「誰か来る」
現在の場所は建物の角。傍らには気絶した防護服の男。迫る足音の正体を確かめるべく覗き込もうものなら気付かれた上でこの状況に制裁が下されることだろう。何せ、倒れている男でさえ理由も聞かずに殴り掛かろうとしてきたのだ。
「どっどどどどうするのぉ……!?」
メルティは青ざめながらルピリアに寄り添う。
「、!」
ラディスが行動を起こすよりも早くトキがその肩の上にそっと手を置いて止めた。各々に目配せをした後で静かに瞼を伏せ、気を集中させる。……
「……あれ?」
足音の正体は案の定防護服の男たちだった。
連絡の途絶えた仲間の様子を見に来たのである。
「あいつら、いないっすね」
一人が怪訝そうに呟く。
「どうせ何処かでサボってるんすよ」
「ったく……呑気な奴らだ」
安月給でもないのに最近の若者ときたら。
「戻るまで俺らで警備固めるぞ」
「うーっす」