英雄のプレリュード
学修時間は、まだ終わっていないはず。それなのにどうしてこの二人がこの場所に居るのだろう。
「話し声が聞こえたんだ」
募る不信感と疑心を表情から汲み取ったのであろうラディスが答えればルピリアはハッとした。
「昼休みに」
「……それで止めに来たの」
「事情を聞きたい」
「聞いてどうするの」
付け入る隙を与えない構えの彼女に思わず「ルピリア」とメルティも袖を掴んだが対するラディスも狼狽えることなく言葉を続ける。
「聞いた以上はどんな事情であれ責任を負うよ」
真っ直ぐな瞳に。
ルピリアは折れたように息を吐いた。
「……クレシス」
答え合わせの如く。
数週間前に見た黒い髪が記憶の淵で揺らぐ。
「彼、ここにいるみたいなの」
ラディスは建物を振り返った。
「そうなんだ」
想像が付かない。
「バイト?」
緊張した空気を解すつもりでそんなことを訊ねたが寧ろ逆効果というもので隣に居たトキからは憐れむような目で見られた。それでも胸の内側で隠しきれない渦巻く剣呑を気の所為だと言い張りたくて。
「大変なんだね」
無理矢理に話をこじつける。
「ラディス」
「うん?」
静かに呼び掛けるトキに今度とぼけたように返事をしてみたけれど不思議と頭が回らない。
「ええっと」
気まずそうなメルティの横で。
「実験」
幻想を打ち砕くかの如く。
「彼はそこで実験をさせられているのよ」
現在の状況や空気感とは凡そ見合わない一見しておふざけとも見て取れるであろう彼の振る舞いに対し少しも意に介さずに。それでいてはっきりと。
「まるで