史上最凶のモテ期!?
屋敷を飛び出して外で解決しようという魂胆かとも思ったが然うは問屋が卸さない──それというのもエントランスに差し掛かったが既に数人によって回り込まれてしまっていたからである。するとウルフは力強く踏み込みながら踵を返したかと思うとそのまま跳び上がり追っ手の頭上を軽々と飛び越えて。
「舌噛むなよ!」
ひょっとして怪盗に盗み出されるお姫様ってこんな心持ちなんだろうか。正直言って見惚れてるどころではない。ルーティは白目を剥きながら頷く。
しかし本当に一体何処を目指して──なんて疑問は程なく明かされる。視線の先に目的の場所が映り込んだのであろうウルフは速度を上げてその目的の場所までの距離を詰めると勢いよく扉を蹴り上げることで開放した。その瞬間反射的に目を瞑ってしまっていたルーティは彼が中程まで進んだところでそろそろと瞼を開いて驚愕する。
「し、食堂……!?」
なんで!? 食堂は現在進行形で業者の人が水道の点検をしているから水が使えないはず──!?
「血迷ったみたいだな」
疑問符の飛び交うルーティに構わず降ろした後で扉の閉まる音と勝利を確信したかのような声にウルフが振り向けばそこにはX部隊メンバーがずらりと。厨房からは業者と話していたリンクが怪訝そうに顔を覗かせており今度こそ完全に逃げ場がない。どうするつもりなんだと不安に満ちた表情で見上げればウルフはふんと鼻で笑い飛ばす。
「ほざけ。馬鹿を見るのはテメェらだ」
言ったが刹那ウルフはレッグホルスターから銃を取り出し構えたがその行動を逸早く察知したフォックスの発砲により銃を弾かれた──しかしそれさえも見越していたようでウルフはそうして銃を弾かれながら腰に備え付けられた小型装置に触れて赤の反射板を展開し残留する弾を素早く弾き返す。
弾き返された弾は天井へ。何の解決にもなっていやしないじゃないかと表情に焦りの色を滲ませるルーティとは裏腹にウルフは口角を吊り上げる。
「掛かったな」
次の瞬間。
「え」
各々の頭上にぽつりと滴ったのは紛れもない雫。この日は天気予報曰く一日中快晴だという話なのに雨漏りなんてあるはずも──そう思ったが直後ブザー音がけたたましく。それを合図に次の瞬間。
「うわああぁあああっ!?」
突如として降り注ぐ大量の水。
雨じゃない。これは──スプリンクラーだ!
「きゃあああっ!?」
「や、やったなウルフ!」
「おぼごぐぉぼおぼッ!」
「ネロが溺れてるぞ!」
「スプリンクラーで溺れるなよ!」
てんやわんやする中でウルフの後ろに隠れていたルーティもそれを浴びないはずがない。するとどうだろう──皆が感じ取っていた強いフェロモンのような甘ったるい匂いは次第に取り払われたようで我に返った一同は目をぱちくりと。
「……あ、あれ」
「私こんな所で何を」
「じゃなくてなにこれ!?」
今度は別の理由で大騒ぎ。
「あなた達……」
事情を知らないリンクは頬に青筋を浮かべながら。
「揃いも揃って一体何をやってるんですかあああっ!」
斯くして。
謎の液体による騒動は幕を下ろしたのだが。
「もう作ってないからな」
倉庫で黙々と棚を重点的に整理していたルーティはたまたま覗きにきたマリオに言われてぎくりと。
「そ、掃除してるだけだよ!」
自分のパートナーが匂いにあてられて暴走する様を見てみたかったなんて。
口が裂けても言えないルーティだった。
end.
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