うちの弟がクソガキすぎる
執拗な煽りにいい加減に心を折られたのかロックマンはぐっと言葉ごと息を呑み込むと冷や汗を滲ませながら駒を置いた。それを見たクレイジーも満足げに口角を吊り上げると考える隙すら与えないまま力強く駒を打って嘲笑う。
「はい。お前のナイトもーらい」
──まずい。
「あれぇ」
次の一手を目にクレイジーは首を傾げる。
「それ。そこでいーの?」
ロックマンは目元に影を落とす。
「あはっ」
つまらなかったけど。
暇潰しくらいにはなったかな。
「チェック──」
「……にはならないさ」
ロックマンが遮る。
「は?」
おもむろに顔を上げたその人の瞳には。
あの疎ましい正義と闘志の灯火が宿っていて──
「この盤面を作り出すのに苦労した」
何、こいつ。
「時間は掛かったが破壊神の視覚情報から"そう見える"のなら俺もポーカーフェイスの才能があったというものだ」
意味分かんないんだけど──
「時に。破壊神」
ロックマンは冷たく見据えながら言う。
「自身の視覚についてどう思う?」
「……はぁ?」
不快感に顔を顰める。
「時間稼ぎのつもりかよ」
「必要な質問だ」
「見れば分かるだろ」
苛立ちを感じながら左手を伸ばせば。
「僕には左目しか無いんだよ」
本来あるべき右目の窪みを覆い隠すべく巻いた包帯越しに触れると。
「だから」
心底うんざりした様子で。
「向かって右側九十度の視界は真っ暗で──」
視えていない?
「ようやくお気付きになられたかな?」
……まさか。
「は……ぁ……?」
まさかまさかまさかまさか。