うちの弟がクソガキすぎる



先攻は白駒のロックマン。何事も初めの一手が肝心だろうと比較的早い段階で何処に動かしたものか顎に手を当てながら思案していると「ねぇ」と後攻のクレイジーが不意に声を掛けた。

「白でよかったの?」
「……何がだ」

ロックマンは視線を上げないまま駒を動かす。

「だってさぁ」

クレイジーはにやにやと笑いながら。

「最初から負けを認めてるみたいじゃん?」


こつん、こつん、……と。

駒を盤上に置く音だけが響く。


「プロモーションを防がれたか」
「堅実だけど痛いわね」
「何やってるのかさっぱりなんだけど」
「分からなくても困らないでしょ」

声を潜めて言葉を交わすマークとルフレにパックマンが顔を顰めながらぼやけば一切振り向かないままルフレが厳しめの一言。

「はあああ!? パックマン別に基本ルールくらい分かりますけど!?」
「ちょっと! 声が大きいわよ!」
「……ルフレも大きいよ」

マークは呆れたように頭を抱える。

「それで」

思い出したように。

「君たちはそこで何をしているんだい?」

見れば、スピカ率いるお馴染みダークシャドウの取り巻きメンバー三人の内一人であるダークファルコが何やらビデオカメラを構えている。言わずもがなこの様子をカメラで録画しているのだろうが──

「あ。発言には気を付けてくださいね」

ダークファルコはビデオカメラの液晶モニターから視線を外さないまま華やかな笑顔で。

「"全国生放送"ですから」


……!?


「大丈夫っスよぉ」

ダークフォックスはへらへらとしながら。

「電波ジャックとかじゃないしぃ」
「動画サイトでライブ配信してんだよ」

遮るようにスピカが答える。

「……不正行為とかじゃないだろうね」
「馬鹿言え。こっちは金に物言わせて有名配信者とコラボまでしてやってんだ。それも何ヶ月も前から立ち上げていたチャンネルでな」

ここまでのことを見越して準備していたのか。成る程流石は世界征服をも目論む創造神マスターハンド──いやいや。ちょっと待て。


血を分けた実の弟が。

屈辱に顔を歪ませる姿を拝みたいという──


それだけの目的の為に?


「徹底した執念を感じるわ」
「ここまで来るともはや狂気だね」

ルフレとマークは口々に青ざめた顔で呟く。

「ご理解いただけましたか?」
「さっぱりだよ」
「いえ。そちらではなく」

ダークファルコは終始にこやかに。

「我々がその個人的な目的に付き合わされているという過酷で且つ理不尽な職場環境についてです」


そうだった。


「ま、俺たち逆らったら減給どころじゃないんで」
「命があるだけマシですよねぇ」
「神様だからな」

そもそもダークシャドウとして生み出された時点で頼らざるを得ないので八方塞がり。

「ブラック企業勤め同士仲良くしとかないスか?」
「気持ちは分からないでもないけど」
「遠慮しておくわ」

……立場を乱用してくる上司を持つと苦労するのは正義も悪も変わらない。
 
 
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