うちの弟がクソガキすぎる
……水を打ったように静まり返った。
創造神の次に頭の回るあの厄介な破壊神の心を折ったのだ。前座としてあれだけ揶揄われたからには指差して嘲り笑うくらいの構えでいたのに。
何だこの静けさは。
「く……クレイジー様……」
ダークウルフは俯いたまま黙り込んでしまったクレイジーを目に罪悪感を覚えたようで。頭の上の耳を垂れて眉を寄せながらその様子に狼狽えていたが、遂に意を決したのか口を開く。
「クレイジー様っ、実は──!」
バキンッ!
彼の力が遠隔で働いたのは次の瞬間である。
ダークファルコは手に持っていたビデオカメラが一瞬で皹が入り破壊されるのを目と鼻の先で見届けたにも関わらず「おやおや」と浅い反応。反射的に一時停止していたスピカも硬直が解ければすかさず「おい!」と怒鳴り声。
「何しやがる!」
……クレイジーは俯いている。
「おい!」
「るっさいなぁ!」
かと思えば立ち上がりつつ声を荒げた。
「勝負に関与してない外野は黙ってろよッ!」
あっ。
「……破壊神、」
異変に気付いたロックマンが声を掛ければ。
「五月蝿いッ! 死ねッ!」
一際大きな声で暴言を吐き捨てて。
そのまま。
「あーあーあー」
ご丁寧に扉から飛び出していったものの後を追いかけたところでその姿はもう何処にもないのだろう。それでもまさかあの破壊神が──
「泣かせちゃったぁ泣かせちゃったぁ」
ダークフォックスがけらけらと煽ればスピカが脛に蹴りを入れるので「だっづぁ!?」と悲鳴。
「破壊神……」
なんて開け放たれた扉を目にロックマンが小さく繰り返すので流石の正義の忠実たる彼も子供心に悔し涙を流してしまう様に罪悪感を感じてしまったものかと思いきや。
「……謝罪の言葉がまだなんだが」
人の心。
「くくっ」
まあこの人が悪の主将相手にそんな気持ちが湧く可能性なんて万に一つも有り得ないか。
「マスター様?」
問題は。
「くふははははははっ……!」