うちの弟がクソガキすぎる



顔を引き攣らせながら。

ゆっくりと視線をずらして盤面の右側を視る。

「ッ……!」


僕の黒駒のキングが──正義厨あいつの白駒のクイーンにチェックされているだと──!?


「くっ」

一体いつの間に……相手のクイーンは手数が若い段階で潰しておいたはずだ。だとすれば──プロモーションか! ポーンは全て捌いたと思っていたのに──そう思わせるのと同時にポーンからクイーンにプロモーションしやがったんだ!

いつからこの僕を出し抜いて──まさか、こいつら外野含めて最初から? 本来の盤面を欺く為にわざと声を出して騒いで僕に勝利を確信させる空気を作り上げて──クレイジーは反射的に奥歯を噛み締めながら周囲の面々を睨み付ける。

「小賢しい真似しやがって! インチキだろ!」
「勝負において不適切な発言は退場の対象だよ」
「不適切な発言してんのはどっちだよ!」

苛立ちに歯軋りをしていれば。

「クレイジー」


兄の声。


「どうしたんだ」

真後ろから降り注ぐ兄の声は。

「まだ勝負は終わってないだろう」


優しいはずなのに。


「や……これは、その……あ、のさ」
「俺たちは"これ"を承知の上で過ごしてきた」

振り返ることができない。

「言い訳に使う道理もないだろう?」


口の中が乾く。


「破壊神」

ロックマンは追い打ちをかけるように。

「……次の手を」


動悸がする。

冷や汗が垂れて視界が歪む。


「は……っ」

どの駒も抑えられている。

動かしたところで延命するだけだ。


未来敗北は変わらない──


「クレイジー」

僕が。

「負けたのか」

この僕が。

破壊神クレイジーハンドが。

「……兄の前で?」


嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!


「……、け……した」

糸が切れた人形のようにがくんと項垂れた彼の顔に暗い影が差し込む。

「聞こえないな」
「っ……」

ロックマンが促せば膝の上に左手を置きながら。

「……負け……ま……した……」
 
 
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