キーメクスの審判



身を解されるような和やかで温かな空気感にむず痒くなったのだろう、それまで無理矢理に口を結んでいたスピカも遂には耐えきれなくなったようで顔を背けてしまえば唇を尖らせながら。

「……帰る」

スピカが言えばダークウルフはいの一番に「はいっ!」と溌剌とした返事をした。口元に手を当ててくすくすと笑うダークファルコの横には頭の後ろで手を組み歯を見せて笑うダークフォックス。スピカはふんと鼻を鳴らしてロックマンに背中を向けたがそのまま歩き出そうとしたところで。

「それと」

不意に立ち止まれば。

あくまでもぶっきらぼうに。

「うちの門限九時だから」

ダークフォックスの耳が小さく跳ねる。

「……うぃっす」

自然と口元が綻びる。

「そーゆーわけなんでぇ」

ダークフォックスは振り返ると。

「また後でね。るぅちゃん」


この世界にはルールがある。

設定がある。


神様には神様の。

"この世界"の望んだ形というものがあって。


僕たちにとっても、それが。

知らず知らずの内に──当たり前で。


正しくて。


「ええ」


……それでも。


「楽しみにしてる」


それでも尚抗って掴み取った先の未来で。

こんな風に笑えるのなら。


例え間違っていたのだとしても。

正しいと思える──


「遅れないでよ?」
「はいはぁい」
「繁華街行くならクーポンあげよっか?」
「え、めっちゃ優しいじゃーん」
「お前にじゃない。触んな」
「世知辛くてウケるぅ」


僕たちは。


これからだって。

壊れる覚悟で選び取っていく。


ねぇ神様。

どうか、見守っていて。


愚かでも無謀でも。

その先を信じて新しい未来を紡ぎ出すから──


「行こっか。兄さん」
「……そうだな」



end.
 
 
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