キーメクスの審判
「時に。……ルーティ殿」
不意にリオンは食事の手を止めると、膝の上に軽く握った拳を置きながら真っ直ぐな目で。
「今度の事件。両者の介入に間に合ったのは、他の者の助力あってのものと見受けられるが」
まずい。
「従兄妹殿だな」
ルーティは咄嗟に自身の両目に手の甲を押し付けて隠したが時既に遅し──いや、彼の目を前にして早いも遅いもこうして顔を突き合わせた時点で決着はついているのだ。リオンが言い当てると、傍らで聞いていたユウは心底嫌そうな顔をしながら深く長い溜め息を吐き出した。
「良いではないか。結果として解決したんだ」
「あれと関わった時点で良いわけがあるか」
そう言って腕を組み脚を組んでそっぽまで向いてしまったユウにルーティが乾いた笑みを浮かべる一方でリオンは顔を綻ばせていた。彼には本心が視えているのだろう。
「おい。貴様また勝手に心の中を覗いたな」
「よろしくお願いします」
「何の話だ」
「今日は蝋燭と荒縄のセットが届くので……」
「クーリングオフしろ」
この二人に関しては放っておいてもあっという間に元の調子に戻りそうだ──そう思いながらルーティは苛立つユウを宥めるべくどうどうと両手を挙げていたが、ふとリオンが頭の耳をぴくんと跳ねさせて食堂の扉を振り返ればきょとんとして。リオンの胸ぐらを掴んでいたユウも釣られて扉を睨んだ後で手荒く解放する。直後だった。
「──ありがとう。本当に助かったよ」
「改めて礼を言おう」
「時代の先駆けとなる先輩方の手助けをするのは、我々の生まれながらの勤めというものです」
この本心の窺えない言い回しは。
「じゃあ、僕たちは部屋に戻るから」
「ゆっくりしていってくれ」
「お言葉に甘えて。……やぁルーティ」
程なく扉が開けば答え合わせ。
「……ロックマン!」
現れたのは第四正義部隊フォーエス部隊の隊長──ロックマンと、お馴染みの取り巻きポジションたるパックマンにマーク……そしてルフレだった。
話によると朝方任務に出かけていたマルスとアイクの手助けをしてくれたらしい。たまたま鉢合わせただとか何とか話していたものの……何かと理由を付けてはこの屋敷を訪れる彼のことである。本当に、たまたまだったのだろうか。なんて。
「調子はどう?」
「君に気にかけられるとは恐れ多いな」
「もう。そういうのはいいから」
「普段通りだよ。……御二方は如何かな」
ロックマンが話を振ってくれたがユウは小さく鼻を鳴らすと顔を背けてしまった。咄嗟に取り繕うようにして「上々だ」とリオンが続けたがロックマンは雲泥の差の反応にくすくすと笑って。
「お大事に。何かあれば是非我々を頼ってくれ」
……一生無いだろうな。
「行くぞリオン」
居心地を悪くしたのやらユウはそう言うなりテーブルに手を付いて立ち上がるとさっさと歩き出してしまった。「ユウ!」なんてルーティは呼んだが留めるように片手を軽く挙げたリオンが微笑みかけて席を立ちその後を追いかける。
「ご、ごめんね……ロックマン」
「いやいや。突然お邪魔したのは此方の方だ。寧ろせっかくの休養中に申し訳ないことをした」
ロックマンは空いた席に腰を下ろす。
「そんなことは……あっ、お茶でも飲む?」
「お構いなく。此度の件で特に大きな被害を受けた隊員の安否がこの目で確認できただけでも収穫さ」
足音。
「あはは」
扉が軋み開く音。
「心配性なんだから──」