キーメクスの審判
異常発生した魔物の討伐、か。……
「また貴様は余計な事を言ったな」
何があったのやら扉越しに急激な賑わいを見せる食堂を背に察したのであろうユウが隣を歩くリオンをひと睨みする。
「待ってました」
「待つな」
「自分お仕置き出来ます。してください」
「寄るな鬱陶しい」
やめぇや、とドンキーが呆れた顔で言う。
「……どうしたのよ」
そんな中で先程から顎に指の背を添えて思い耽っているのはリンクだった。ユウとリオンのやり取りに苦笑いを浮かべていたリムはその様子に気付くと後ろ手を組みながら歩く速度を落として、遅れて歩く彼の隣に並び怪訝そうに横からひょいと覗き込む。
「さっきのこと?」
「いえ。今回の任務です」
「異常発生した魔物の討伐依頼よね」
リンクは頷く。
「……実はその異常発生している魔物は、本来ならハイラル地方に生息している希少種なんです」
「ええっ?」
リムは思わず立ち止まったが構わず歩いていくのを見て慌てて駆け寄りまた隣に並ぶ。
「ちょっとそれ誰かに相談したの?」
「たった今貴女に初めて話しました。ですが誰かに相談したところで解決するような問題でしょうか」
この勇者は報連相という言葉を知らないのか。なんて思ったが、それほど重要視してないんだろうな。人知れずハイラル基世界を悪しき魔の手から救ってきた勇者なのだから。
「結局のところやることは変わりませんから」
リムは不服そうにしながら前に向き直る。
「知らないわよ。何かあっても」
「今までだってどうにかなってきたでしょう?」
「それは、そうだけどっ……」
ドンキーは遅れて歩く二人を振り返った。
「なぁにイチャついとんねん」
「いっ……違うわよ!」
そう。
誰も重要視していなかったのだ。
異常だって変化だって。
これまでどうにかなってきたのだから。
僕たちは、きっと。
この時の出来事を一生忘れられないことだろう──