キーメクスの審判



後に知ったことだが、各地で発生していた怪奇事件はまるで初めから何事もなかったかのように良くも悪くも元通りになっていたらしく──それもこれも全てマスターとクレイジーの仕業なのだろうが、これだけ今回の件について関わりを持ってしまった自分たちに対して記憶処理を施していないのはやはりその必要がないと判断したからなのだろう。

遠回しに戒めているのかもしれない。


いつ如何なる時も。

この世界である限り神の目はあるのだと。……


「あっ」

あれから数日が経過した。食堂で昼食のうどんをいただいていたところ扉が開くのを見て釣られて目を遣れば入ってきたのはユウとリオンである。

「もう大丈夫なの?」
「……あぁ」
「心配をかけてしまったな」

ルーティが座り直して促すと二人は素直に同じ席に腰を下ろした。

マスターとクレイジーのお陰で目が視えるようになったユウと能力の制御が出来るようになったリオンだったがすぐには部屋の外に出ることができなかった。どうやら急に治ったところで眼精疲労や車酔いに似た症状が抜けなかったらしく慣らす意味でも休む必要があったのだという……その能力が故目を頻繁に使用するのが彼らだ。頼りにしているところはもちろんあるが無理はしてほしくない。

「何か食べる?」
「軽食でよければお持ちしましたよ」

二人が食堂に入ってくるのが見えたのだろう現れたのはサンドイッチとトーストを乗せた皿をそれぞれ手に持ったリンクだった。その後ろでは水を乗せたお盆を持ったゼルダが微笑みかけている。

「ありがとう。リンク殿」
「いえ。調子の方は如何ですか?」
「いつまでも引きこもっていられないからな」

ユウはサンドイッチを手に少量ずつ口に運ぶ。

「気にしなくてもいいのに」
「そうですよ。しっかり休んでください──」
「それは貴方もですよ、リンク」

ゼルダが厳しく口を挟むとリンクは苦笑いを浮かべながら明後日の方向に視線を流した。

「リムの奴はどうしたんだ」
「ピチカと出掛けたみたいだよ」

そうか、と。

ユウは何処か安心したように短く息をつく。

「リオンも食べていいんだからね?」
「いや、私は……その……あまり人に食事の様子を見られるのは慣れていないというか……」

これまた意外な一面である。

「……例えるなら」

リオンはぎらりと目の奥を光らせて。

「マジックミラー露出プレイより羞恥心と興奮をッ!」
「さっさと食え」
「はい」

このやり取りも今となっては懐かしい。

「、なんか焦げ臭くないですか?」
「……! 餃子!」
「何をやってるんですかゼルダ!」

慌ただしく転がる勢いで厨房に傾れ込む二人を目にルーティも思わず失笑した。……よかった。


日常が戻ってきたんだ。

少しずつでいい。このまま何事もなく皆が本調子に戻ってくれたら嬉しいな──
 
 
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