キーメクスの審判
ただ呆然とするルーティを差し置いて詳しい理由を説明するまでは堪えきれなかったのかピチカは大声を上げて泣き始めた。その内に端末の向こう側で微音がしたかと思うと聞き覚えのある声。
「ルーティか? 俺や」
「、えっと……ドンキー?」
せや、と。その特徴的な口調は寧ろ今更、彼以外であるはずもない──どうやら状況説明の為に電話を代わってくれたようである。
「そっちはどぉやった?」
「僕たちの方は──」
「電話に出てンだから分かるだろ」
ウルフが余計な口を挟むとルーティは慌てたように肘で小突いて睨んだが対するドンキーは「そらそうやわ」なんてけらけらと笑って。
「フォックスとファルコから事情は聞いとったで。俺らも準備してすぐ行こか思うとったんやけど何や色々と揉めてしもうてな」
それはええねん、と。ドンキーは話を続ける。
「そしたらや」
ルーティはごくりと息を呑む。
「マスターとクレイジーが来よったんや」
──やっぱり。
「何ゆうても聞いても、無視。警戒はしとったけど全く構いもせんと勝手に歩いていきよる」
ルーティは口を結んで耳を傾ける。
「その内に止めよ思うたリンクが真っ先に飛び出していったんやけどマスターは右手を翳すだけで止めよった。あの時はなんか"大人しくしていろ"とか何とかゆうとったんかな……そしたらな」
「代わってください」
なんやお前! と反抗的な声が遠ざかり敬語口調の男の声が代わって話し出す。
「貴方は話が長すぎます。……俺です」
「リンク、……それで」
「大方察せられているみたいですね」
その通りです、とリンクは小さく笑う。
「恐らく神力を使ったのでしょう。マスターとクレイジーは俺たちが抱えていた問題を数十分足らずで解決して去っていった」
記憶喪失も。失明も。能力の制御も。……
「……よかったね」
リンク、と。
ルーティが微笑すれば。
「……はい」
何処まで分かっていたんだろう。
僕たちの選択を見て。どうしようもない部分だけを補ってくれた。
マスターとクレイジーは。
……やっぱり。"この世界"の──
「せやけど」
電話の向こう側でぼやきが聞こえる。
「やっぱ奇跡っちゅーのは神様の仕業なんやな」
「ま、結局彼らの掌の上でしたね」
ルーティは笑みを零す。
「そうでもないよ」
その証明たる景色を遠く眺めながら。
「奇跡は。──神様がいなくても起こったよ」