キーメクスの審判
熱が伝わってくる。
……声が。音が戻ってくる。
「ダークフォックス!」
ぼんやりと薄く開いた瞼の隙間から霞がかった曖昧な景色が映り込む。ゆっくりと瞼を開くのに合わせて暗い深海の色の背景に銀色の何かが揺れ動くのに目を奪われていれば次第にはっきりと。
「へへ。……るぅちゃん」
形容し難い安心感に自然と顔を綻ばせて。
その手を弱々しく握り返して笑う。
「ただいま──」
誰もが諦めかけていた?
いいや。誰も──諦めなかった。
だからこそ捕まえた。掴み取ることが出来た。
命を。──ただひとつの選択肢を。
「馬鹿っ……馬鹿……!」
ルフレはしゃくりあげながら訴える。
「っ……なんで……!」
「だって……るぅちゃん、危なかったし」
「私は! 天才と謳われた軍師の妹だわっ!」
ダークフォックスはその手を力強く握る力が緩んだ隙にゆっくりと伸ばす。
「でも……嫌だった」
そのまま彼女の頬を触れて薄笑みを浮かべる。
「──私だって!」
感情が込み上げる。
「あなたが傷付くのも……傷付けられるのもっ!」
「……うん」
「そうやって格好付けて庇うくらいなら!」
爆発する。
「私と一緒に死になさいよっ!」
彼女の想いは。
天秤に掛けるまでもなく。
あまりにも純粋無垢で──繊細で。
「るぅちゃん大胆ー」
ダークフォックスは変わらず軽薄に笑う。
「……俺ね」
夢を見たんだよ。
「夢の中の俺は抜け駆け成功しててさぁ……本物の俺に成り変わってた。すげーっしょ」
でも。
「思ったより嬉しくなかったよ」
……だって。
「今のままのカラダの方が」
透明な粒がなだらかに伝って落ちる。
「るぅちゃんに気付いてもらえるもんね?……」