キーメクスの審判



その後もマークやロゼッタ、ベレスといった比較的魔法の扱いに長けている正義部隊の面々による影虫をダークフォックスの体内に送り込む作業が数時間に渡って行われた。一見して魔力の管さえ作ってしまえば簡単な作業であるかのように思われたが特殊な作りである為か形を維持するべく常時気を張らなければならないらしく──片時も目を離せないどころか一ミリだって気の抜けない息の詰まる空気感に無言を強いられているような気がして。

「皆……」

ルーティはか細い声で不安げに呟く。

「……日が沈んできたな」

翳りを見せ始めた空を睨みながらウルフが言うのを聞いてルーティも釣られて空を見上げた。確かに、あんなにも青く晴れ渡っていた空がいつの間にか橙色に染められている──空の彼方では時の巡りを急かすように紺碧色の波が押し寄せてきていて。あろうことか夜まで告げようとしている状況に焦燥感に駆られてしまう。

「っ……ルフレ」

マークが呼んだが案の定、彼女は頑なだった。

「ロゼッタ」

交代のつもりでデイジーが声を掛ける。

「……分かりました」


その時だった。


「、!」

デイジーとロゼッタの背後に現れた影を素早く銃弾で撃ち抜いたのはジョーカーだった。続けざま土を捲る不気味な音が一同を取り囲むようにして響き渡り不穏な空気が渦巻く中で事態を察したルーティが口を開く。

「スタルフォス……!」

ハイラル平原は夜の闇に翳ると一部の魔物が活発化する──その代表たる魔物こそ剣と盾を装備した骸骨剣士スタルフォスである。窪んだ影の奥で魂の灯火を宿らせたスタルフォスの数は一匹や二匹だけに留まらない。現状など知る由もないスタルフォスが迫り来るのを作業を見守る側だった戦士たちが応戦するべく飛び出した。

「はあああっ!」

ルキナは剣を薙ぎ払う──が。

「な……!」

血を通わせた動物とは訳が違うのだ。薙ぎ払いにより骸骨の頭を刎ねられたスタルフォスはふらふらと数歩後退したが直ぐさま体勢を持ち直して踏み出しながら剣を大きく振りかぶる。

「カメックス!」

そんな声がしたかと思うとスタルフォスが振り返るより早く放たれた水鉄砲が押し除けながら骨の体を砕いた。ルキナはハッとしたように、

「ブルーさん!」

そう叫んだのは感謝を伝える為ではない。

「っ……!」

今まさに真横で剣を振りかぶっていたスタルフォスにカメックスへの命令も間に合わず腕を構えて目を瞑るブルーだったが、一方向から連続して飛んできた小さな何かがスタルフォスの骨の体を撃ち抜いて体勢を崩した。異変を感知したブルーが瞼を開いたと同時に先程より大きな影が目にも留まらぬ速さでスタルフォスに突撃する。

「み……ミカゲさん……!」

呆然と名前を呼ばれたその人は水で生成された刀を淡々と振るう。


「怯まないでッ!」


力強く声を上げたのはルルトだった。

「私たちはッ!」

力強く踏み込みながら。

「──第四正義部隊『フォーエス部隊』!」


咆哮の如く。


「誇り高き正義の戦士ッ!」
「……おぅよッ!」

ラッシュは自身の手のひらに拳を打ち付ける。

「弱きを助け強きを挫くのが正義の役目ッ!」
「随分な言い様ですね。我々がか弱いとでも?」

ダークファルコが小さく笑えば。

「そうよ。……だから」

ルルトは青の閃光を滾らせた拳を構えながら。

「──そこで黙って見ておくことねッ!」
 
 
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