キーメクスの審判
手のひらから抽出された濃度の高い魔力は発動者の意思に従い、まるで糸のように枝分かれすると煌めく粒子の尾を引きながら複数回交えて太陽光さえも遮断する特殊な管を編み出した。続けざまルフレが左手をダークフォックスの胸の上に翳しながら視線はそのままにゆっくりと右手を差し出せば察したスピカのアイコンタクトでダークウルフがその右手の前に移動して片膝を付く。
「頼んだぞ」
普段彼らダークシャドウは影虫の補充やメンテナンスも兼ねてマスターの作った特殊なカプセルの中で睡眠を摂っている。単純な回復を願うだけならその特殊なカプセルの中に放り込んだ方がより確実だろうが移動時間やカプセルの起動時間、設定の手間を加味してもそんな余裕は残されていない。
だからこそ今ここで他のダークシャドウの影虫を彼の体内に輸血の要領で直に流し込む──これで解決するという確証はないが最後のチャンスとなる。
「、分かってる」
脳裏を過ぎるのは最悪の予想。
ひょっとしたら。
神様にはこの先の展開が読めていて。彼はどうしたって助からなくて。手遅れかもしれない。
誤った選択かもしれない──
「大丈夫だ」
そんなルフレの不安な気持ちを感じ取ったのだろうダークウルフはその右手を掴みながら。
「俺は」
そう口を開いたが思い留まったかのように首を横に振って紡ぐ言葉を改める。
「俺たちは。……お前たちを信じる」
胸の内側がじんわりと熱くなる。
「っ……」
言葉を呑んで瞳を震わせながら見つめ返す。
「……始めてくれ」
お願い神様。
奇跡や慈恵までは求めたりしないから。
どうか見守っていてほしい。
私たちが選び取った新たな選択肢の行く末を──
「……いいの?」
処置に徹する集団から距離を置いて眺める兄にそう話しかけたのはクレイジーだった。
「あいつらのこと放っといて」
マスターは一瞥して小さく息を吐き出す。
「そうだな」
この世界に影響を及ぼすなら。
物語を綴る、その妨げとなるのなら。
「……今はいい」
返ってきた言葉にクレイジーは最後まで視線を残しながらも集団に向き直る。
「……分かったよ」