キーメクスの審判
え? とルーティは予想だにしていなかった発言に驚き目を開きながら思わず声に出しそうになった。
……だって。
命を使わせてくれ、って──?
「……何なりと」
「ばっ」
二つ返事のダークウルフに言い出しっぺであるはずのスピカが声を上げる。
「詳細も聞かずに! 断れよッ!」
「断る道理がありません」
「そりゃお前はいいだろうけど──!」
「我々も一向に構いませんよ」
次に答えたのはダークファルコである。
「消耗品ですからね」
「……!」
「と、冗談はさておき」
この状況下で最も心臓に悪いであろう言葉でその場の空気を凍り付かせた後でさらりと撤回したダークファルコは胸に手を置きながら。
「貴方が俺たちを見殺しにする筈がありません」
柔らかく微笑みかける。
「……上手く。使ってくれるのでしょう?」
スピカは大きく目を開いた後で。
力強く頷いて返す。
「……ああ!」
出来得る限りの最善を尽くしたところでそれは結局愚かで無駄な足掻きでしかないのかもしれない。
何も変わらないかもしれない。
それでも、神様。
僕たちが最後になった時に出来るのは──
「……影虫を……輸血の要領で」
一刻の猶予も許されない中で短く纏められた提案を聞いたドクターは顎に手を当てながら繰り返した。
「こいつらにとっちゃ大事な動力源だ」
スピカはいつになく真剣な表情で。
「ただし影虫は空気に触れた側から死滅する」
「それを防ぐ為の魔力の管という訳か」
続けられたロックマンの言葉に深く頷きながら。
「手ぇ貸してくれんだろ」
ちらりと一瞬だけ視線を返した後で。
ロックマンは向き直る。
「この一回限りだ。次からは高く付く」
今までの彼なら何処ぞの姑かのような嫌味ったらしい口振りで神経を逆撫でしていたことだろう──ルーティとスピカは思わず顔を見合わせたがすぐさま同じように向き直った。関係の進歩を喜ぶのはこの試みが成功してからでも遅くないのだから。
「口ではどうとでも言えるがね」
ドクターは言う。
「簡単な話じゃないぞ?」
「でも──出来ないわけじゃない」
ルフレはダークフォックスに両手を翳す。
「だったら、私は」
金色の光がぼうっと灯る。
「──その可能性に望みをかける!」