キーメクスの審判
……彼は。
ダークフォックスは、まだ──?
「やってくれたな」
「気持ちは分からんでもないがね」
マスターとクレイジーをひと睨みするスピカに聴診器を外しながらドクターは溜め息を吐き出す。
「制作者のおふたりさんにしてみりゃぁ謂わばデータの復帰も約束されていないジャンク品だ。ここに手間暇掛けるよか新しく作り直した方が遥かに手っ取り早い……消耗品の認識なら尚更だ」
偽物集団ダークシャドウは新世界創造計画を阻止するべく立ちはだかるX部隊に対抗するべく造られた人型兵器──彼の話した通り目に掛けているように見えても実際には拳銃の鉛玉のように消耗品という認識でしかなかったのだろう。
「だからって!」
スピカは一層顔を顰める。
「どんなに理不尽でもこいつらは命まで張ってきたってのに……そうも簡単に見放すのかよ……!」
最終的には互いしか見えていない彼らに。
多くを求めるべきではないのだと分かっていても。
それでも──
「僕は、マスターとクレイジーを信じるよ」
ルーティの発言に誰もがハッとした。
「っ……お前なぁっ、こんな時に!」
「この状況がふたりにとって都合が悪いものだったとしたらもっと早い段階で手を出してるはずだよ」
口を噤むスピカに畳み掛けるように。
「それこそ──今回の事件に気付いた時点で被害が拡大する前に自分たちの手で解決して記憶処理するくらいのことはしていたと思う」
そうしなかったのは──?
「現段階ではまだ彼らが手出しする最悪の事態まで至っていないということか」
ロックマンは顎に手を当てながら呟く。
「まだ、僕らでも出来ることがあるはずだよ」
続くルーティの言葉にスピカは痺れを切らしたかのようにがしがしと乱雑に頭を掻きながら。
「ああぁ……っくそ……!」
神様ってヤツは。
「……考えてたんだけどよ」
スピカは顔を俯かせながらぽつりと。
「前例も何も無ェ……けど試したいことがある」
「、……リーダー?」
心配そうに顔を覗き込むダークウルフを罪悪感やそれに近しい感情を滲ませながらそろそろとその顔を見上げて。スピカは言う。
「……お前らの命」
この日一番誰よりも辛く表情を歪めながら。
「使わせてくんねーか?……」