キーメクスの審判
そうしてマスターとクレイジーの側から離れたスピカはルフレの傍らに片膝を付いて案じるルーティの元へ駆け付けた。「状況は」と小さく訊ねれば泣き腫らした顔のルフレが俯きがちに答える。
「応急処置的なものではあるけれど治癒魔法で傷を塞いだから……止血はしてあるの」
でも、と。
それっきり彼女は口を閉ざしてしまう。
「……スピカ」
沈黙を許せばそれだけ最悪の展開が繰り返し脳裏を過り精神を擦り減らすことになるものと危惧して、ルーティは入れ替わるように口を開く。
「今までダークシャドウの人たちが大怪我を負った時ってどうしてたの?」
スピカは眉を寄せながらも答えた。
「……普通の人間とは作りが違うからな。腕がすっぽ抜けただの臓器を抜かれただのそういうのじゃない限りはマスターの奴が作ったカプセルの中で一日二日寝てるだけで大抵は完治してた」
そっか、とルーティは返す。
「、リーダー」
ダークウルフは不安げに傍らに付く。
「俺たちに何か出来ることは」
「それを今考えて──」
「我々も助力しよう」
感嘆符と疑問符が飛び交う。
「な……っ」
スピカが言葉を失うのも無理もない──横からひょいと顔を出して口を挟んだのはあのロックマンである。次いで「ドクター」と呼び付ける彼にスピカは遅れて顰めっ面になりながら、
「……おい! 余計なことすんな!」
「素人が見るより早く済む」
「あのなぁっ、」
「隊長……どうして……」
呆気に取られるルフレの肩をぽんと叩いたのはマークだった。憂いを帯びた彼の表情に、じわりと熱いものが込み上げてくる。
「我々正義部隊の共通方針は揺るがない意志──例え私情を挟もうが相手が悪であるならば等しく討つべきであり今後もそれは変わらない」
それでも、と。
ロックマンは言葉を区切って続ける。
「こんなにも釈然としないのなら。罪悪感を感じて後悔と自責の念に苛まれるのであれば」
眉を顰めながら。
「それは──正義であってはならないと思う」
正義の鑑である彼が。
そんな風に思うだなんて。……
そうして話し終えた頃にようやく呼び付けられたドクターが顔を出した。すれ違い際に小さく声を掛けるロックマンに片手を軽く挙げて進み出ながら流れるように聴診器のイヤーチップを耳に掛けてダークフォックスの傍らに片膝を付き、チェストピースを服越しに胸に宛てがう。
「……こりゃあ……確かに駄目だな」
ドクターは言った。
「じゃあ、」
「こらこら。本職の目の前で素人が好き勝手症状を予測するのは感心しないな。その逆だ」
……逆?
「心臓と思われる臓器が僅かに鼓動している」
ルフレは目を開く。
「……絶望的ではあるがね」