キーメクスの審判
反してクレイジーは呆れたように息を吐いた。
「お前だけの勝手な都合で話さないでもらえる? 最終的な決定権は僕たちにあるんだよ?」
腰に手を当てながら。
「僕も兄さんもただの横暴や我が儘で振り回してるんじゃない。ちゃんとした考えがあってお前たちを丁重におもてなし基管理してやってんの。そこに大なり小なりズレが生じると後々面倒なんだよ」
ルーティは恐る恐る口を開く。
「僕たちが……ゲームのキャラクター、だから?」
この頃になるとクレイジーも昂っていた感情が落ち着いてきたのだろう──短く息を吐いた後で思いの外あっさり答えてくれた。
「そ。お前たちがちゃんと真面目に設定に忠実で居てくれているから僕たちも面倒が見れんの。データの修正や修復が出来るのはお前たちが無意識下でも型にハマってくれているからだよ」
安全に。理想的に。
物語を綴って完遂できるように。
「こ、今回だけじゃないんじゃないかな……」
「なにが?」
「こういう感じのことって」
クレイジーはあっけらかんとした態度で。
「当たり前だろ。お前たちが知らないってだけで、こっちはずっとそうやってきたんだから」
僕たちは。
何処までいっても。彼らの──
「知らないというか記憶処理してるだけだけど」
「クレイジー。喋りすぎだ」
マスターが呆れたように腕を組むように右腕を胸の前に置きながら苦言を呈すとクレイジーは「はぁい」と悪びれる様子もなく間延びした声で返した。ここまでのやり取りからも汲み取れるように今回の一部始終も彼らの手によって都合の良いように修正されるのだろう。……
「ふたりは」
ルーティは緩く拳を握り締める。
「それでいいの?」
彼らにも彼らなりの理想があるのだろう。
それでも。
「何が?」
仄かに抱いた期待や希望は打ち砕かれた。
「……僕は」
ルーティは俯いて目を伏せる。
「例えマスターやクレイジーにとって都合が悪いのだとしても」
握る拳に力が込められる。
「それが。……そんなことが」
ぱっと顔を上げる。
「当たり前なのは──嫌だ!」
力強くそう言い放ってダークフォックスを抱き締めるルフレの元に駆け付けるルーティに、マスターとクレイジーは顔を見合わせ小さく息をついた。
「何をムキになってるんだか」
「そりゃムキにもなるだろ」
仏頂面のスピカが返す。
「作り直すっつっても同じ個体をそっくりそのまま再現出来るわけじゃないんだろ?」
「そうだな」
今度はマスターがあっけらかんとして答えた。
「当たり前のように答えやがって」
分かりきっていたことなのに。
「俺だって……嫌だからな」
影を差しながらぽつりと返して背中を向ける。
「……絶対に」