キーメクスの審判
誰も愕然とする中でマークは眉を顰める。
見当違いであってほしかったのだ。神の座を巡る争いに巻き込まれるのはもう二度と御免だとまで思っていたのに。猫っ毛の少年はまるで答え合わせかのようにくつくつと笑い出す。
「違うな」
警戒を解かず目を見張るマークに。
「もう成ってるんだよ」
少年は告げる。
「神様に」
遠く。ひび割れる音がした。
「あっははははは!」
マークは茫然自失として立ち尽くすルフレを尻目に捉えたが耳に障る高笑いに引き寄せられるように視線を戻すと改めて睨み付けた。少年は一頻り笑った後で己の胸に手を置きながら言い放つ。
「俺たちは特別なんだ!」
上空の少年少女は静観している。
「貴様等は──『転生者』で御座るな」
悦に浸る空気に水を刺すようにしてミカゲが言えば少年は首を反らしながら振り返る。
「……そうだよ」
転生者──
「最近流行りの早死に救済コンテンツだ。事実俺たちは元の世界じゃ馬鹿にされたり除け者にされたり──目も当てられないような酷い扱いだった。挙げ句の果てにゃ事故だの事件だのに巻き込まれてジ・エンドってな──そんなのはあまりにも可哀想だからってんで神様だか仏様だかの粋な計らいで特別な能力を授かって別の世界に転生させられたのさ」
マークは眉を顰める。
「それの何が悪い? 何処に問題がある?」
猫っ毛の少年は淀んだオーラを纏いながら。
「俺たちのやっていることは悪じゃない──ただの正義にゃ成し得なかった悲願だ」
感情を昂らせていく。
「、!」
意を決して口を開こうとしたルーティを今度留めたのはスピカだった。
「……スピカ?」
「言ってることは確かに正しいだろうさ。けどそれだって時と場合によるとか何とか言うだろ」
ルーティは困惑した表情を浮かべる。
「その典型だよ──」
「テメェらも俺たちは何も出来ないと思ってる──馬鹿にしてるんだろ」
「、リーダー」
「審判を下すのは誰だと思う?」
不安げに呼びかけるダークウルフに。
「もう分かるだろ」
スピカは冷静に応える。
「さっきから」
その様子が視界の端に映り込み気に障ったのだろう猫っ毛の少年はゆっくりと目を向けると問答無用で手を翳して差し向けると叫んだ。
「ごちゃごちゃとッ!」
少年を中心に半径二メートルの地面が罅割れる──マークはもう一度ルフレを振り返った後でやむを得ないと判断したか魔導書を構えた。直後に足下に魔方陣が浮かび上がり風が巻き起こるも予想を反した強風が吹き荒れ思わず身を庇う。向かって正面の少年の周囲には抉れた地面の一部や黒の閃光──明確な殺意を前に相手の方が速かったかと思わず奥歯を噛み締めながら覚悟を決めたが刹那。
「、へ」
そんな抜けた声と共に。
少年の腕が斬って落とされる。
「なんだ。たまには仕事するじゃん」
悲痛な叫び声とは裏腹に。
「特別に褒めてあげる」
軽快な声が降り注ぐ。
「──お勤めごくろーさま」