キーメクスの審判
依然として晴れない煙幕の中で
「……ルーティ……」
黄金色の髪を靡かせて。
対峙する二組の間に降り立ったのは。
特殊防衛部隊X部隊のリーダーを務める少年。
ルーティ・フォン。……
「スピカも、……ロックマンも」
ルーティが言葉を続けると目を奪われるばかりだったスピカもはっと我に返ったようで。不快感に眉を寄せながら容赦なく噛み付く。
「関係ないだろッ!」
「君のその軽率な行動は正義の意志に反する」
ロックマンは終始冷めきった様子で。
「それとも──悪の片棒を担ぐつもりかい?」
「ああ言えばこう言うたぁこの事だな」
ルーティの隣に立ったのはウルフだった。どうやら操縦していたウルフェンは自動操縦にして飛ばし、彼自身は飛び降りてきていたらしい。
「ちったぁ落ち着いたらどうだ」
「ウルフの言う通りだよ」
慎重に。割れ物を扱うかのように。
「今回の事件の犯人はダークシャドウじゃない」
「……根拠は?」
「ダークリンクを解放してもらえるかな」
ルーティが言うとロックマンは小さく息を吐き出した後で尻目で後方に視線を遣った。するとそれまでダークリンクの動きを制していたのであろうベレトとベレスがそれぞれの剣を引き、解放してくれたのである。それまで地面にうつ伏せに転がされていたダークリンクは占めたとばかりに液状化して影の中に溶け込み、次の瞬間にはスピカの傍らで姿形を再形成──ルーティは改めて質問を投げかける。
「昨日……リンク達と会ったんだよね。そこで何を見たのか教えてもらえる?」
「は。知るかよ」
鼻を鳴らして非協力的かと思いきや。
「奴らにちょっかい掛けたのは事実だがな」
ダークリンクは答える。
「ただ転げたにしてはちと大袈裟だった。何があったのかまでは知らねぇが奴らに仕掛けたのは俺たちじゃねーよ」
「し……信用できません」
剣を構えながらカンナが返す。
「信じられねえってならそこまでの話だ。ただ──そこの餓鬼が言いたいのはこういうことだろ?」
ダークリンクはくっくっと喉を鳴らして笑った後で余韻のように口角を吊り上げながら。
「──X部隊連中を殺して本物に成り替わるのが最終的な目的である俺らが。何故そこで目もくれずに撤退を選んだのか」
ざわつく。
「そ……それは」
「簡単なことだろうが」
狼狽えるブルーにリドリーが続ける。
「成り替わりのチャンスなんてのはこの先幾らでも巡ってくる。テメェらはそれより各地で起こして回っていた事件を優先したかった。だからあの場では適当に黙らせてさっさと撤退した」
理に適っている。
……でも。
「しつこく付け狙う割には無知ですねぇ。もっと俺たちの特徴や特性を知っていただかないと」
ダークファルコが口を開く。
「成り替わり、というのは彼ら本物の体を奪う行為です。能力や状態、頭の先から爪の先までその何もかもをそっくりそのまま引き継ぎます」
おもむろに立ち上がって砂や土を手で払いながら。
「被害者は記憶喪失に失明、能力の制御不能とそれはそれは散々なものだと窺いました……ああ。もう一人に至っては勇者の証たるその剣にすら拒絶され触れることすら敵わないのだとか」
わざとらしく。
「さてここで問題です。一時的にただ黙らせるにしてもそうまですることに俺たちにどんなメリットがあるのでしょう?」
追い討ちをかけるかのように。
「後々その器を得たところでそれはもう元の体より弱体化しているようなものなのに──」