キーメクスの審判
正義が悪に討ち勝つ場面というのはいつの時代も心躍るものがあった。けれどそれは己の心が正義でああり悪に反する意志を持ち──護る側だからこそ、護られる側だからこそ。
……詰まるべく。
それに該当しない立場とあらば。
正義は。
世にも恐ろしい怪物となる。
「に、」
自然と漏れ出した声を口を結んで留める。
「賢明な判断だね」
燻んだ瞳には鏡写しの片割れの姿。
「君が僕をどう呼んだところで揺らがない」
土踏む音に呻く声。
「僕はもう……迷わない」
煙幕が晴れた先に広がっていたのは紛れもない正義による鉄槌を下された悪の敗北だった。
厳密には膝が立つくらいには耐え忍んでいるダークシャドウのメンバーも居たがそれでも勝ち筋は見えない絶望的な状況で。地面に捩じ伏せられている者もいれば各々の武器を突き付けられて身動きを取れなくなっている者もいて──ロックマンは足下に倒れたダークマルスが地面に転がった剣に手を伸ばそうとしたのを視線も動かさないまま容赦なく手首を踏み付ける。
「ぁぐ……ッ!」
「おいおいどぉすんだリーダー!」
「……多勢に無勢」
「ンなこた分かってんだよクソ兄貴!」
「ギャーギャー喚くなッ!」
ダークウルフは銃を構えながら怒鳴った。
「丁重に扱ってくれているところ申し訳ないが……そちらにいる魔導師の少女に人質としての価値など見出さないことだな」
スピカはちらっとルフレを見遣る。
「……随分な言い様じゃねぇか」
眉を寄せながら。
「仲間の顔も忘れたかよ」
「まさか。物覚えはいい方だよ」
屈託のない笑顔でさらりと。
「狂ってやがるな」
スピカは不愉快そうに吐き捨てる。
「それを"お前"が言うのか?」
何処までも。
「選ばせてあげよう」
ロックマンは静かに右腕を構える。
「……生か死か」