キーメクスの審判
そんな物言いで癪に障らない筈もない──次の瞬間ダークウルフはさながら獰猛な肉食獣かのように音を立てて息を繋ぎながら不快感に眉を寄せてダークフォックスに銃口を向けていた。まさか本気で撃つはずもないのだろうがそれにしたってこの状況に反して本人含む周囲があまりに冷淡過ぎる──しかしながらそんな空気に触発されたのやらダークウルフが引き金を引こうと指を動かすのでそれには流石のスピカも「ウルフ」と宥めるように呼んで。
「気持ちは分からないでもないけどな……そいつの言ったことは間違っちゃいねえだろ」
続けざまそんな具合に諭せば意地を折られたのやら奥歯を噛み締めながらダークウルフは銃を構えた腕をようやく下ろした。その場の勢いで仲間に銃口を向けるとは敵ながらなかなかに冷や冷やさせられる──ルフレも密かに胸を撫で下ろす。
「上司共には上手く言っといてやるよ」
「リーダー! こんな奴の肩を持つんですか!」
「そいつの頭をぶっ飛ばして何になる」
噛み付く勢いのダークウルフにスピカは淡々として返しながらロングジャケットのポケットに手を突っ込んでルフレを見下ろした。気のせいかその目は普段敵対している時と違った比較的穏やかであるかのように見て取れて。
「……お前」
紡ぐ口の動きに目を奪われる。
「本当に」
次の瞬間だった。
「──伏せてください!」
逸早く危機を察知したダークファルコが叫ぶと同時に腰に備え付けられた小型装置に触れて青白い六角形の光の反射板を起動させた。ただし蹴り出すまでは間に合わないと踏んだのか彼自身が正面に飛び出したが直後、しつこく居座っていた黒煙を突き破る様にして放たれた青のエネルギー砲によって大きく弾かれる結果となる。
「ファルコ!」
ダークフォックスは思わず声を上げた。
「……やれやれ」
長く付き合っていればその声音だけでもその人の心情心理というのが読み取れるものである。ルフレは思わずぎくりとして振り返った。
「やれ罠に掛けるだの一網打尽だの。現実も見えていないのに気の早いことだな」
徐々に煙幕が晴れて。
「……やりやがったな」
全貌が明らかとなればスピカは舌打ち。
「被害妄想も甚だしい」
その人は呆れたように吐き捨てる。
「正当防衛だよ。これは」